株式会社の定款に記載する事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項がありますが、相対的記載事項のうち一定の事項を変態設立事項といいます。
変態設立事項には、現物出資、財産引受け、発起人の報酬等、設立費用があり、会社の財産的基礎に関わるような部分の取り決めをさします。
変態設立事項は、原則、裁判所の選任する検査役の調査を受ける必要がありますが、現物出資と財産引受けには検査役の調査を省略できる場合があります。
検査役の調査の結果、その内容が不当と認められたときは、発起設立は裁判所において、募集設立は創立総会において変更されることになります。
現物出資
現物出資とは、金銭以外の財産により出資をすることで、不動産、動産、有価証券などがあげられます。
一般的には、募集株式等の払い込みは現金で行いますが、金銭以外の財産でも払い込みをすることが認められています。
現物出資により出資の方法が多様化し、出資する側も会社もメリットとなる部分がある一方で、現物を実際よりも過大に評価することによるリスクが懸念されます。
例えば、50万円の価値しかない車両を500万円と評価し、会社の帳簿に500万円の資産として計上すると、実際には50万円の価値しか有していないわけですから、資本の空洞化という問題が生じてしまいます。
そのため、このような現物出資には、調査が必要とされています。
なお、現物出資は、設立時には発起人に限り認められています。
財産引受け
財産引受けとは、発起人が会社のために会社の設立を条件として、特定者から一定の財産を譲り受けることです。
例えば、発起人Aが、発起人の妻Bの所有する車両(時価50万円)を、会社の成立を条件として、会社が500万円で購入するという契約を締結した場合、会社は不当な資本の空洞化を招くことになります。
財産引受け自体は、会社の取引行為のため、定款による制限は不要とも考えれらますが、引き受ける財産が過大評価されないためにも、検査が必要とされています。
発起人の報酬等
発起人の報酬とは、発起人が会社設立時の事務に対する報酬のことです。
また、特別の利益とは、利益配当に関する優先権や会社の設備利用などの特権など、設立の功労者として発起人が受ける利益のことです。
発起人の都合よく、無制限に莫大な報酬が定められないためにも、検査が必要とされています。
設立費用
設立費用とは、会社設立に必要な経費を指します。
具体的には、定款の作成費用、株主募集の広告費用、創立事務所の賃借料などが該当します。
不透明な支出を認めると会社財産の基礎が脅かされるため、検査が必要とされています。
設立費用は、発起人が支払い、その後会社に求償することになります。
調査の省略ができるケース
現物出資で出資された財産と財産引受けの目的である財産について、以下の場合は検査役の調査を省略することができます。
・定款で定めた現物出資財産等の価額の総額が500万円を超えないとき
・現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券について、定款で定めた価額が市場価格を超えないとき
・定款で定めた現物出資財産等の価額について弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人のいずれかの証明を受けたとき
なお、検査役の調査が省略される場合でも、設立時取締役は、定款に記載された現物出資等の価額が相当であること、弁護士等の証明が相当であること、出資の履行が完了していることなどについて、調査をする必要があります。
また、現物出資等の財産の会社設立時における本来の価値が、定款に記載した価額に著しく不足する場合は、発起人および設立時取締役は、連帯して、その不足額を会社に支払う義務が課せられます。