ここでは、株券不発行の原則および株主名簿の記載事項等について解説します。
株券不発行の原則
株券とは、株式会社において出資者である株主の地位や権利を表した有価証券です。
株券には、会社の商号や株主の氏名、株数、代表取締役の署名または記名押印が記載されています。
しかし、会社法では、株券は原則として発行せず、定款の定めがある場合に限り発行することとし、これを株券不発行の原則といいます。
公開会社では、ペーパレス化による決算の迅速性および確実性を重視し、非公開会社では、株式の流通性が乏しく株券の必要性が低いことが主な理由となっています。
なお、株券の発行時期は、定款で株券を発行するとした会社は、株式を発行した日以後、遅滞なく、株券を発行しなければなりませんが、非公開会社は、株主が請求したときに限り、株券を発行すれば良いとされています。
また、株券不発行会社の株主は、自己について、株主名簿に記載された事項証明する書面の交付を請求することができますが、株券発行会社の株主は請求することができません。
株主名簿
株主名簿とは、株主に関する事項を明らかにするため、会社法の規定により一定の事項を記載することが義務付けられている帳簿のことです。
株主名簿の記載事項
株主名簿の記載事項は以下のとおりとなります。
・株主の氏名または名称および住所
・株主の有する株式の数
・株主が株式を取得した日
・株券の番号(株券が発行されている場合)
会社は原則として、株主名簿をその本店に備え置かなければなりません。
株主名簿の書き換え
新たに株式を取得した者は、会社に対して株主名簿の書き換えを請求します。
この書き換えにより、株主は会社に対して株主の地位を主張できる仕組みとなっています。
株券不発行会社においては、株主名簿の名義書き換えにより、株式の取得を会社および第三者にも対抗することができます。
一方で、株券発行会社では、名義書き換えによる第三者への対抗は認められておらず、会社の取得を対抗するにとどまります。
株券の交付がなければ株式譲渡の効力が生じないことから、株券の占有が第三者への対抗要件となっているためです。
なお、会社が自己責任で名義書き換えをしていない者を株主として扱うことは可能です。
また、会社が株主名簿の名義書き換え請求を不当に拒んだ場合には、株主は、損害賠償請求と併せ、株主であることの主張をすることができます。
株主名簿の閲覧・謄写の請求
株主および債権者は、株式会社の営業時間はいつでも、請求の理由を明らかにし、株主名簿の閲覧・謄写を請求することができます。
株式会社が株主に対する通知または催告は、株主名簿に記録された住所あてに発送し、通常到達すべき日において到達したとみなされます。
株主名簿制度上の基準日
会社は、あらかじめ定めた基準日において記録された株主を、その権利を行使することができる者と定めることができます。
基準日において株主名簿に株主として記録されていない者は、株式を譲り受けた者であったとしても、株主と扱われることはありません。
これは、株主名簿の名義書き換えがなされていなければ、会社に対して権利を行使することができないためです。
補足情報(株式会社)
・株式譲渡