遺言(遺言とは何か?)
誰しも自分が死亡した後に、自分が築いてきた財産を「〇〇さんに与えてほしい」「このように使ってほしい」と希望を持っているものです。これを法的に、より確実なものとさせるために、遺言があります。
遺言とは遺言者が死亡した後に、遺言により示された意思表示に一定の法律効果を与える制度です。遺言の効力が発生するときには遺言者は存在しておらず、本人に真意を確認することができません。遺言の効力は遺言者が死亡した時点で発生するからです。
そのため、その意思を法的に確かなものとするために、厳格な要式であることが求められ、遺言ですることができる事項も法律で定められています。要するに、決められた方法で決められた事項の遺言でなければ、法的には無効となるのです。
もちろん、残された家族や、普段お世話になっている人への感謝の気持ちを残す遺言については、法的に無効であってもなんら問題はありません。ここで法的に有効であるかの判断が必要になるのは、相続・財産処分に関すること、子の認知や未成年後見人の指定などの身分に関する事項などが挙げられます。
なお、遺言は未成年者であっても、15歳以上の者であれば単独で有効にすることができます。これは遺言制度の性質上、代理行為が許されないため、遺言者の最終意思を尊重し、より多くの者に遺言を残すことができる必要があるためです。
また、遺言者はいつでも遺言の全部または一部を撤回することができ、これは他の一般的な契約等の法律行為とは異なり、遺言の重要な性質のひとつでもあります。遺言の撤回には①自分で撤回する ②遺言を書き換える ③遺言に抵触する行為をする などが挙げられます。
具体的には、遺言書を破るなど故意に破棄した場合や、遺贈の目的物である不動産を遺言者の意思で処分、売却した場合などが想定されています。新しい遺言や行為が優先し、これに抵触する以前の遺言は、抵触する範囲で撤回したものとみなされるのです。
ちなみに、いくら法定に従った遺言をしても無効・取消しとなることもあります。公序良俗違反の内容の遺言は無効であるし、詐欺や脅迫による遺言は取消しをすることができます。例えば、全財産6億円を顧問弁護士に遺贈するといった内容の自筆証書遺言は、公序良俗違反として無効になった判例があるようです。
今の例は少し極端ですが、有効な遺言を残すためには、やはり正しい知識が必要といえるでしょう。
次回は遺言書の方式(遺言の種類)についてみていきます。