法的に有効な遺言
普通方式遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)のうち、一般的に利用されているのは自筆証書遺言と公正証書遺言です。公正証書遺言は専門家のサポートを受けるケースが多く、なにより公証人の確認が入るため、法的に無効な遺言ということは考えにくいでしょう。そこで今回は自筆証書遺言をする場合の注意点について見ていきたいと思います。
自筆証書遺言は遺言者が自書し、自らの責任で遺言書を保管するため、手間と費用は最小限に抑えることができますが、その一方で遺言の要件を欠き、無効となることがあります。どんなに家族への愛情を込めた遺言でも、その効力が無効となれば円満で円滑な相続とはほど遠いものといえるでしょう。それでは、自筆証書遺言書について以下の3点に着目します。
①全文、日付、氏名を自書 ②押印について ③封の仕方
まず初めに遺言者が遺言事項を書き記した本文、日付、氏名を全て自書する必要があります。日付が特定できないもの、例えば2022年11月吉日のような記載は無効となります。また、氏名については、ペンネームでも有効との判例もありますが、後のトラブルを回避するためにも、戸籍通りに書くことをお勧めします。
なお、財産を一覧にしたリストのことを財産目録といいますが、2019年1月から自書である必要がなくなりました。つまりパソコン等で作成した文書をプリントアウトした書面でも、財産目録として有効となります。使い勝手としては大幅に改善されましたが、財産目録の各項に署名・押印を要しますので注意が必要です。
さらに、本文の内容変更は法律で厳格に決められており、この方式に反すると無効になる可能性があります。不安な場合は一度破棄し、新たに書き直すことも検討しましょう。
次に押印種類については、特段の定めがないため認印でも有効となりますが、遺言書の信憑性を高めるためにも、実印または金融機関届出印が望ましいと言えます。
また、遺言書が2枚以上になった場合はホチキス留めをし、つなぎ目に押印することを契印といいますが、これは法的には求められていません。しかし、前述と同様に、遺言書の信憑性を高めるために、遺言書に押印した印と同じもので契印することも一つの有効な対策です。
なお、実印で押印した場合は、印鑑登録証明書も併せて保管しておくなどの配慮も、残された家族への思いやりといえるでしょう。
最後に封にも本人が自書し、遺言書と同じ日付を書き、遺言書に押印した印と同じもので押印し、さらに封印をします。
さて、ここまで来れば、次に頭を悩まされるのが遺言書の保管方法です。遺言書は遺言者が死亡した後、速やかに発見されて、初めて意味を成します。「遺言書さえ発見されていればこんなことには・・・。」といった事態を避けえるためには、どのような方法があるのでしょうか?
次回は遺言書の保管方法についてみていきます。