定款認証手続きの留意点

会社・法人設立にあたり定款を作成すると、公証人役場で定款認証手続きが必要となります。
定款認証とは、公証人が正当な手続きによって作成された定款を証明することです。
株式会社の設立登記をするためには、認証を受けた定款が必要であり、公証役場で認証を受けた定款でなければ受理されません
定款の内容等が会社法その他の法令に違反していないかどうかについて、公証人が事前に審査し、必要があれば修正等をした上で、認証をすることとなります。
定款認証に必要な書類や費用について解説していきます。

定款認証に必要な資料

定款

通常、定款3通を公証人に提出し認証を受けます
「公証人役場保存用原本」、「会社保存用原本」、「設立登記申請証謄本」の3通となります。
嘱託人は、全員が同時に公証役場に出頭し認証を受けることとなっており、各人が個別に認証を受けることはできません。
なお、定款3通には、発起人全員の署名または記名押印した上、袋とじの場合を除き、各葉ごとに契印する必要があります。

嘱託人とは

嘱託人とは、公証人に定款認証の嘱託(≒依頼)をする者であり、発起人自ら定款を作成する場合には発起人であり、行政書士又は司法書士等が代理作成する場合には、当該行政書士又は司法書士等を指します。

発起人の印鑑証明書

発起人が本人であることを証明するため、公証人は発起人全員の印鑑証明書の提出を求めます。
また、会社が発起人の場合には、発起人となることがその会社の目的の範囲内であることを要し、公証人がその確認をすることがあるため、代表者の印鑑証明書および会社の登記簿謄本の提出が必要となります。
なお、印鑑証明書および登記簿謄本は、発行後3カ月以内のものに限られます。

法人の実質的支払者となるべき者の申告書

株式会社、一般社団法人、一般財団法人の定款認証の嘱託人は、法人成立時に実質的支配者となるべき者について、氏名、住所および生年月日等、その者が暴力団員および国際テロリストに該当するか否かを公証人に申告する必要があります。
法人の実質的支配者を把握することで法人の透明性を高め、マネーロンダリングやテロ資金供与等を防ぐこと目的としています。
実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配することができる個人をいいます。
例えば、株式会社の場合、以下の番号が若い順に優先して該当することになります。

株式の50%を超える株式を保有する個人
②25%を超える株式を保有する個人
③事業活動に支配的な影響力を有する個人
④代表取締役

なお、申告された実質的支配者となるべき者が暴力団等に該当し、その法人の設立行為に違法性があると認められた場合には、公証人は定款認証をすることができません。

定款認証に必要な費用

収入印紙

4万円の収入印紙を公証人保存用原本に貼付して消印する必要があります。
消印は、発起人全員でする必要はなく、代理人でも、公証人の職印でもすることが可能です。
定款の不備を公証人に指摘され、新たに作成するなどを考慮すると、収入印紙は消印をすることなく持参する方が良いでしょう。

定款認証手数料

株式会社又は特定目的会社の定款の認証の手数料については、資本金の額等が100万円未満の場合3万円資本金の額等が100万円以上300万円未満の場合4万円その他の場合5万円です。
これは現金で用意し、直接公証役場に支払うことになります。

定款の謄本交付手数料

定款の謄本交付手数料としては現金2,000円程度が必要となります。
定款の枚数により謄本交付手数料は異なります。
・電磁的記録の保存:300円
・同一情報の提供:1通700円
・書面の交付による加算額:1枚20円

その他留意事項

定款の作成自体を代理する場合

通常、定款は発起人自らが作成しますが、定款の作成自体を代理人によりすることもできます
この場合、定款に記名押印または署名をするのは代理人となり、公証人に対する認証の嘱託は、当該代理人自身でも、第三者を選任しても良いこととなっています。
ただし、代理人は認証嘱託に際し、定款作成の権限を付与されていることを証明するため、発起人全員から定款作成を委任する旨の委任状を提出する必要があります。
また、本人であることを証明するため、代理人の印鑑証明書または運転免許証などの身分証明書の提出が必要となります。

定款認証の嘱託を代理する場合

定款認証の嘱託は、代理人によってもすることができます
この場合、発起人の一人が他の発起人の一部または全部を代理して嘱託することも、発起人以外の者が発起に全員を代理して嘱託することもできます。
代理人による嘱託の場合は、発起人が記名押印または署名した委任状と印鑑証明書、本人であることを証明するため、代理人の印鑑証明書または運転免許証などの身分証明書の提出が必要となります。

終わりに

定款認証は、会社設立時に発起人全員の同意のもとで作成した定款(原始定款)であることを公的に証明することで、定款の紛失や改ざん、社内紛争などのリスクを抑止することができます。
なお、公証役場との事前手続きがメールや申請フォームなどで行え、日時調整や公証役場への足を運ぶ手間を省くことにつながる、電子定款もあります。
電子定款は、1名のみの電子署名でよく、収入印紙を貼り付ける必要がないため、会社設立にかかる費用を節約することができます。
定款の認証を受ける際は、電子定款をご検討されても良いかもしれません。

記事の投稿者

行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
愛媛県松山市南江戸3丁目10-15
池田ビル103号
TEL:089-994-5782
URL:https://kunimoto-office.net/

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です