資金調達時の決算書のポイント
金融機関から借入をするときに求めらる資料として、前期、前々期の決算書があげられます。
金融機関は提出された決算書を分析し企業格付けを行い、その結果により、融資の大筋が決定することになります。
ここでは、資金調達時において金融機関が確認する決算書のポイントを解説していきます。
安全性に関する数値
財務分析上の安全性を向上させるためには、流動資産の合計と純資産の部の合計を増加させることが効果的です。
流動資産の合計の増加
流動資産は、現預金の金融資産と売掛金や棚卸資産等の営業に係る資産から構成されています。
営業に係る資産の増加は資金繰りの悪化にもつながるため、安易に増加させるべきではありません。
そのため、流動資産を増加させるためには、いかに金融資産の増加を図るかがカギとなってきます。
キャッシュフロー経営
キャッシュフロー経営を行うことで、現預金の増加が期待できます。
キャッシュフロー経営を行うには、利益率の増大、無駄な設備投資しないこと、売掛債権回収期間の短縮、在庫回転期間の短縮などがあげられます。
無駄な投資を省く
設備投資をするには、事前に綿密な検証をすることが非常に重要です。
設備投資をすれば、現預金の流動資産が固定資産に移りますが、その結果、売上が増加したり、人件費が減少するなど、投資に見合った効果が期待できれば問題ありません。
しかし、設備投資の効果が見合ったものでなければ、投資をする前に再度検討する必要があるといえるでしょう。
純資産の部の合計の増加
純資産の部の合計を増加させるためには、資本金の増加、利益剰余金の増加があります。
資本金の増加
代表者からの借入がある場合は、それを現物出資して資本金に充当する方法があります。
これは、負債の部から純資産の部に移動することで、財務上の数値をよくする効果があります。
利益剰余金の増加
利益剰余金とは、過去からの利益の蓄積によるものです。
この数値を増加させるためには、コツコツと利益を積み重ねるしかありません。
これこそが経営の神髄といえるのではないでしょうか。
収益性に関する数値
会社の資金繰りを良くするためには、利益を獲得することが最も効果的であり、その利益を獲得する能力を計る指標が、収益性に関する指標です。
主に、売上高経常利益率、総資本経常利益率、自己資本利益率、インタレルトカバレッジレシオがあげられます。
効率的な経営
これらの指標を良くするためには、売上高および経常利益高の増加が必要となります。
しかし、これらの数値を増加させるのは、経営の本質的な部分でもあり、非常に難しい課題といえます。
そこで、発想の転換です。
売上高経常利益率は、経常利益÷売上高×100により算出され、同じ経常利益の場合は、売上高が少ない方が評価が高くなります。
限られた売上高のなかで、原価管理の徹底と経費管理の工夫を実行し、最大の経常利益を上げることで、効率的な経営を実現することができます。
総資産の圧縮
総資産を圧縮することで、総資本経常利益率の評価と高めることができます。
総資本とは、会社が所有している資産の総額のことですが、決算書上では貸借対照表の資産の部の合計です。
資産の圧縮は例えば以下のようなものがあります。
・売掛金:不良債権、債券放棄残高はないか
・棚卸資産:不良在庫の処分は適正か
・固定資産:遊休資産はないか など
これらを圧縮すると、費用に計上されるため損益計算書には悪い影響を与えますが、確実に効率的な資金運用が可能となります。
無駄な資産を保有することや、大きな借入をすることはできるだけ回避し、少ない負債および純資産で、少ない資産を有効活用することで、利益を獲得することが大切です。
終わりに
決算書上から見た企業の格付けを向上させるためには、安全性に関する指標、収益性に関する指標の評価を向上させることが重要となりますが、決算書以外のポイントとしては、定性分析もあります。
決算書に表れない、会社の経営者、経営方針、固有の特徴などです。
・市場動向:参入している市場分析
・市場規模:現状規模と将来性
・競争力:業界内での力、商品力、製品力
・業歴:実績と歴史 など
会社の実力は、決算書のみでは評価できない部分も多くあるため、融資時における会社の評価項目をよく理解し、日頃から整理しおくことが大切です。
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特定行政書士 國本 司
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