革新的サービス開発の支援!ものづくり補助金とは
日本政府が主導している補助金のうち、代表格にあたる”4大補助金”というものがあるのをご存じでしょうか?「小規模事業者持続化補助金」、「IT導入補助金」、「ものづくり補助金」、「事業再構築補助金」これらの補助金制度は、それぞれの分野において日本の経済・社会の発展を促進することを目的としています。その中から今回は、比較的補助上限額も高額となる、ものづくり補助金について、ご紹介いたします。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金の正式名称は、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金です。
中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い、生産性向上のための設備投資等の支援を目的としています。
ものづくり補助金と省略されることがほとんどであるため、どうしても製造業に特化した補助金のイメージが先行しますが、物の販売やサービスを提供する事業においても活用可能です。
補助対象者は、日本国内に本社及び補助事業の実施場所を有する中小企業者等です。
具体的には、下表の数字以下となる企業または個人が該当しますが、その他にも、企業組合や協業組合など、一定の組織は該当します。
業種 | 資本金 | 常勤従業員 |
造業、建設業、運輸業、旅行業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 (ソフトウェア業等、旅館業除く) | 5千万円 | 100人 |
小売業 | 5千万円 | 50人 |
ゴム製品製造業 | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア、情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5千万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
ものづくり補助金(通常枠)の概要等
ものづくり補助金は、「通常枠」、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」、「デジタル枠」、「グリーン枠」、「グローバル市場開拓枠」の全部で5つの類型により構成されており、今回は申請件数の最も多い、通常枠について解説していきます。
【概要】
革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援することを目的としています。
【要件】
以下の要件を全て満たす3~5年の事業計画を策定することが必要となります。
・事業計画期間に、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
・事業計画期間に、事業場内最低賃金を地域別最低賃金の30円以上とする
・事業計画期間に、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
事業計画終了時点において基本要件未達の場合に、返還義務が設けられている点には、十分留意してください。
【補助金額】
従業員数
5人以下 :100万円~750万円
6~20人 :100万円~1,000万円
21人以上:100万円~1250万円
【補助率】
1/2
ただし、小規模企業者(事業者)等は2/3
【補助対象経費】
機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
ものづくり補助金では、設備投資が絶対条件となっており、50万円以上の機械装置等を取得しなければなりません。
また、機械装置・システム構築費以外の経費は、総額500万円以上は補助の対象外となりますので注意してください。
申請に必要な書類
ものづくり補助金は、電子申請システムでのみ受け付けられており、そのため事前にGビズIDプライムアカウントの取得が必要となります。必要な書類はデータで作成し、オンライン申請により添付する形となります。
事業計画書
A4サイズ10枚程度で、補助事業の具体的取組内容、将来の展望、会社全体の事業計画を記載します。
【補助事業の具体的取組内容】
事業の目的・手段について、今までの自社での取組内容、補助事業で機械装置等を取得する必要性を示し、課題を解決するための目標や達成手段を記載します。
また、事業期間内に投資する機械装置等の型番や、取得時期についてのスケジュールを記載するとともに、どのように他者と差別化し競争力強化を実現するかについて、その方法や仕組みや実施体制なども記載します。
【将来の展望】
事業化により想定している市場及び期待される効果について、その成果の価格的・性能的な優位性・収益性や現在の市場規模も踏まえて記載します。
併せて、事業の成果について、目標となる時期・売上規模・量産化時の製品等の価格等について簡潔に記載します。
【会社全体の事業計画】
会社全体の事業計画における「付加価値額」や「給与支給総額」等の算出について、算出根拠を記載します。
事業計画の数値は、補助事業終了後も、毎年度の事業化状況等報告等において、伸び率の達成状況の報告が必要となります。
補助経費に関する誓約書(様式1)
補助対象経費の適切な使用について、また取得した財産の管理、処分についてなど、それぞれの規定に従う旨の誓約を提出します。
賃金引上げ計画の誓約書(様式2)
申請時点の直近月の事業場内最低賃金、直近決算における給与支給総額を記載し、これを引き上げる旨の誓約を提出します。
賃金引上げ幅が大きければ、加点措置の対象となります。
決算書等
直近2年分の貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表が必要となります。
なお、設立2年に満たない場合は、以下の書類を添付することで代用が認められています。
【1年以上2年未満】
1期分の決算書
【1年未満】
事業計画書、収支予算書
また、個人事業主の場合は、確定申告書の添付が必要となります。
従業員数の確認資料
【法人】
法人事業概況説明書の写し
【個人事業主】
所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書の写し
その他の書類
その他、必要に応じて「労働者名簿」、「応募申請時において再生事業者であることを証明する書類」を提出します。
また、任意の添付書類として、審査において加点を希望する場合は、以下の書類を提出する必要があります。
・成長生加点:経営革新計画承認書
・政策加点:履歴事項全部証明書(開業届)
・災害等加点:事業継続力強化計画認定書
・賃上げ加点:特定適用事業所該当通知書
審査基準
審査基準は、補助金を受け取るために必要な条件や要件を示しています。
補助金の審査基準を理解することで、当該プロジェクトが補助金の条件や、要件に適合しているかどうかを評価することができるだけでなく、申請書類や提出物の作成、申請プロセスをスムーズに進めることができます。
さらに、補助金を受け取るために必要な措置や、改善を行ううえでの重要な指標となるため、よく理解し基準に沿った補助事業の計画と計画書の作成が大切です。
審査基準を簡単にまとめると以下のとおりとなります。
【補助対象事業としての適格性】
・申請要件、申請枠、補助率等を満たすか
・計画で付加価値額が年率3%以上か など
【技術面】
・新製品(サービス)の革新的な開発か
・開発課題および目標の達成度が明確か
・事業実施のための技術的能力があるか
・課題の解決方法に妥当性があるか など
【事業化面】
・社内外の体制や財務状況等が適切か
・寄与するユーザー、市場規模が明確か
・価格的・性能的に優位性や収益性があるか
・補助事業として費用対効果が高いか など
【政策面】
・地域の経済成長を牽引する期待ができるか
・適切なマーケティング差別化が図れているか
・他社と連携し経済的波及効果が期待できるか
・先端的なデジタル技術を活用しているか
終わりに
ものづくり補助金は、製造業はもちろん、幅広い業種が対象となっており補助率、補助上限額共に魅力的な内容となっています。
しかしその分、要件は比較的は厳しく、革新性や具体的な計画の策定が採択されるポイントとされており、気軽にチャレンジしやすい補助金とはいえないでしょう。
事業計画の作成など、煩雑な事務手続きを専門家に依頼することも一つの選択肢として、是非検討してみてはいかがでしょうか。
行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
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