ここでは、発起設立と募集設立について解説します。

発起設立

発起設立とは、設立の企画、執行を行う発起人が、設立時における発行株式の全部を引き受ける方式のことです。
会社設立時の株主は発起人だけとなるため、発起人に対してに全ての決定権があるといえます。
発起人は出資の履行と設立時役員の選任をしなければなありません。

出資の履行

発起人は設立時発行株式を引き受けた後、遅滞なく、引き受けた株式について全額の払い込み(現物出資は財産の全部を給付)をします。
金銭の払い込みは、発起人間で定めた払込取扱場所行うことになります。
出資の履行をしていない発起人があれば、発起人は、当該発起人に対して、期日を定め、その期日までに出資の履行をしなければならない旨を通知します。
なお、この通知は、当該期日の2週間前までに行うものとされ、この期日までに履行がないと、その発起人は設立時発行株式の株主となる権利を失うことになります。

設立時役員の選任

発起人は、出資の履行が完了すれば、遅滞なく設立時役員を選任することになり、会計参与や会計検査人等も選任することができます。
なお、定款で設立時役員を定めていれば、改めて選任する必要はありません。
選任された設立時取締役は、出資の履行の完了、その他設立手続きの法令や定款との適合性など、設立事項について調査します。
また、違法な事項があれば発起人に通知しなければなりません。

募集設立

募集設立とは、発起人は設立時の株式の一部を引き受け、残りを発起人以外の者を募集して引き受けてもらう方式のことです。
発起人は、株式引受人の募集、創立総会の開催、株式引受人は、出資の履行をそれぞれしなければなりません。

株式引受人の募集と割当

発起人は、少なくとも1株を引き受けなければなりません。
募集設立は、発起人以外の者も株式を引き受ける設立方式であるため、それらについて定める必要があります。
まず、募集事項について確定します。
発起人全員の同意により、設立時に発行する募集株式の数、その払込金額、払込期日等を定めます。
次に、株式の割り当てをします。
発起人は、株式を引き受ける者に対して一定の事項を通知し、株式引受人から申し込みを受けて、株式を割り当てます。
発起人には、割当自由の原則が適用され、誰に何株割り当てるのかは自由に決めることができます。

株式引受人の出資の履行

発起人にるよる割当が実施された後、株式引受人は発起人が定めた払込期間内に、全額の払込みをしなければなりません。
株式引受人が、払込みをしなかったときは、株主となる権利を失います。
このとき、発起人に未払額を補填する義務はなく、原始定款に記載された設立時の出資最低額を満たしていれば、設立に支障はありません。
また、発起人は、払込取扱期間である金融機関に、払込金保管証明書の交付を請求することができます。

創立総会

創立総会とは、発起人が招集する議決機関で、出資を履行した発起人および設立時株主全員により構成されています。
創立総会は、払込み期日または期間の末日のうち、最も遅い日以後に遅滞なく招集しなければなりません。
創立総会の招集にあたり、発起人は、創立総会の2週間前までに、設立時株主に対し、総会で決議する事項を定めて記載した招集通知を送付します。
例外的に、設立時株主の全員の同意があれば、招集の手続きを省略し創立総会を開催することができます。

創立総会の決議事項

創立総会では、会社法で定められた以下の事項について決議することができます。
・募集による設立に規定されている事項
・株式会社の設立の廃止
・創立総会の終結
・その他株式会社の設立に関する事項
なお、議題として設立時株主に通知した事項以外は、原則として決議できませんが、定款の変更・設立の廃止の決議については、招集通知で議題とされていない場合でも、例外的に決議することが可能です。

創立総会の決議要件

設立時株主は引き受けた設立時発行株式1につき、1個の議決権を有し、創立総会における決議は、以下の2つの条件を満たした場合に可決されます。
(1)出席した設立時株主の議決権の2/3以上の賛成
(2)議決権が行使することができる設立時株主の議決権の過半数の賛成
例えば、議決権を行使できる設立時株主の議決権総数が50株とし、出席した設立時の議決権数が45の場合、(1)45株の2/3以上は30株以上、(2)50株の過半数は26株となります。つまり、共に条件を満たす株数は30株となり、普通決議の可決には30株の賛成が必要になります。
なお、創立総会の決議により、発行する株式の全部について譲渡制限の定めを設ける定款の変更をする場合は、設立時株主の頭数の半数以上で、その議決権の2/3以上にあたる多数決により行わなければなりません。
また、定款の変更により取得条項付き株式についての事項を定める場合は、設立時株主全員の同意が要件となっています。

創立総会の運営

創立総会では、発起人が設立の経過について報告し、次に、設立時取締役を選任していきます。

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