遺言書の保管方法とその他留意事項

遺言効力の発生は遺言者の死亡に伴いますので、効力発生時には遺言者は既にこの世にはいません。遺言書を適切な方法で保管していなければ、そもそも発見されないかもしれません。その場合、遺産は相続人間の協議により決められてしまうため、遺言書の保管方法が非常に重要になってきます。どんなに家族への愛情を込めた遺言でも、伝えることができなければ円満で円滑な相続とはほど遠いものといえるでしょう。

遺言を確実に執行するために、遺言書の本文に遺言執行者、つまりこの遺言を誰が取り仕切るのかを記し、遺言書はその遺言執行者が保管するのが望ましいです。信頼できる家族でも良いですし、公平を期すために第三者である専門家に依頼するのも良いかもしれません。

また、2018年に成立した遺言書保管法における遺言書保管所への保管も検討しましょう。これは、法務局で自筆証書遺言を保管する制度で、高齢化進展による社会経済情勢の変化を考慮し、相続をめぐる争いを避けることを目的としています。

遺言書保管所に保管する場合、遺言書保管官により、法的に遺言書の要件が満たされているかの、外形的な確認がなされます。これをすることにより、遺言書保管所で保管されていない遺言とは異なり、家庭裁判所での検認手続きが不要となるのです。

検認手続きとは相続人に対し遺言の存在やその内容を知らせ、遺言書の形状および内容等を明確にし、偽造・変造を防止することを目的とした、家庭裁判所での手続きです。決して遺言の有効・無効を判断するものではありません。検認手続きは遺言者が死亡した後の手続きであり、この負担を強いられるのは残された家族です。この手続きを省くことができるだけでも、遺言者として円滑な相続に貢献したといえるでしょう。

ただし、遺言書保管所に預けても、遺言者の死亡後、遺言書が相続人等へ自動で送付されたり、遺言書が保管してある旨の通知が届くわけでもありません。(一定の条件の下、遺言書を保管している旨の通知により相続関係人等に手続きを促すサービスはあります。)この時もやはり遺言執行者に遺言保管所に保管している旨を伝えるなど十分な準備が必要です。

なお、金融機関等の貸金庫に保管することはお進めできません。貸金庫契約は法的性質上、契約者が死亡しても当然には終了せず、被相続人の権利義務の一つとして相続人に承継されます。このことから、遺言者が死亡した後に、貸金庫の開扉や物の持ち出しができない場合があるからです。

そもそも遺言とは「何のために・誰のために」を第一に考えるならば、法的に有効な遺言をすることはもちろん、円満で円滑な相続を想定した遺言をすることが必然ではないでしょうか。「気が付けば自己満足の遺言になっていた」というような事態を避けるためにも、専門家のアドバイスを受けることも是非ご検討ください。

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