残された配偶者の保護(後編:配偶者短期居住権)

遺産分割における残された配偶者の保護制度の拡充について、中編では配偶者居住権を取り上げました。

残された配偶者の保護(中編:配偶者居住権)はこちら

後編では配偶者短期居住権について詳しく見ていきます。

配偶者短期居住権導入の背景

日本では超高齢化社会を迎えており、男性女性の平均寿命は80歳を大幅に上回っています。
そのため、相続が発生したときの、残された配偶者の年齢は相対的に高くなっており、様々な社会問題が生じています。
その代表的な例として、残された配偶者以外の者が、自宅の建物を取得する相続または遺贈があった場合に、直ちに建物から退去しなければならい状況下では、長年住んでいた配偶者にとって相当の負担が強いられます。
これまでも、被相続人(死亡した人)が、死後も配偶者に建物を使用させない特段の意思表示がある場合以外は、配偶者に無償で使用させる旨の合意があったものと推認され、遺産分割終了時までの間は居住を認めることで、一定の保護が図られていました。
しかし、相続人以外の第三者に遺贈する旨の遺言などによる場合は、被相続人からすれば、第三者が居住することが前提ですから、配偶者に建物を使用させない特段の意思表示があったと解釈され、配偶者の保護の観点からすれば不十分なものでした。

配偶者短期居住権とは

そこで改正法により、配偶者が相続開始時に、被相続人の所有する建物に無償で居住していた場合は、被相続人の意思に関わらず、一定期間無償で居住する権利(配偶者短期居住権)を認めることで、配偶者保護制度の強化が図られました。
配偶者短期居住権は、遺言や遺産分割協議により設定するのではなく、被相続人の意思に関わらず自動的に発生する権利であるというところがポイントです。

なお、「配偶者」とは法律上の配偶者であり、内縁の配偶者は含まれまず、「居住していた」とは、被相続人が単身赴任や入院しているケースもありますので、夫婦間の同居を意味するものではありません

配偶者短期居住権の留意事項

居住建物が遺産分割の対象である場合の配偶者短期居住権は、他の相続人に対し、以下の①②いずれか遅い日までの間、存続します。
遺産分割の協議が成立し建物の所有者が確定した日
相続開始の時から6ヵ月を経過した日
一方で、居住建物が遺産分割の対象でない場合の配偶者短期居住権は、居住建物の取得者から、配偶者短期居住権の消滅の申し入れがあった日から6ヵ月を経過した日までの間、存続します。
つまり、従来の配偶者の保護に当たる、遺産分割終了時までの間は居住が認められる措置を踏襲しつつ、相続開始の時(消滅の申し入れがあった日)から6ヵ月を経過した日を設けることで、制度を拡充した形となります。

配偶者短期居住権は、短期的に居住することの保護を目的としているため、配偶者の権利は建物を居住用として使用するにとどまり、配偶者短期居住権の譲渡や収益を得る行為はできず、また取得者(所有者)の承諾なく賃貸することもできません

ただし、取得者により配偶者短期居住権が第三者に譲渡された場合は、取得者は配偶者に対して、債務不履行にかかる損害賠償義務が生じます。
これは配偶者短期居住権には登記要件がないため、配偶者自身が第三者に対抗することはできませんが、取得者には配偶者の使用を妨げてはならない義務が設けられているためです。

配偶者保護制度のまとめ

遺産分割における配偶者保護制度の拡充について簡単にまとめると以下のとおりです。

【持戻し免除の意思表示の推定】
婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が、他の一方に対し、居住建物やその敷地を遺贈または贈与したときでも、持戻し免除の意思表示があったものと推定し、その遺贈等は相続財産と判断されない

【配偶者居住権】
以下の①~③の要件を満たす残された配偶者は、生存している間、居住用建物の全部を無償で使用する権利(配偶者居住権)を取得する。
①配偶者が、被相続人(死亡した人)の法律上の配偶者である
②配偶者が相続開始の時点で、被相続人の所有建物に居住している
③以下のいずれかに該当すること
・相続人間での協議による遺産分割で配偶者居住権を設定した
・配偶者居住権が遺言などにより遺贈の目的とされた 等

【配偶者短期居住権】
配偶者が相続開始時に被相続人の所有する建物に無償で居住していた場合は、被相続人の意思に関わらず、一定期間無償で居住する権利(配偶者短期居住権)を取得する。

終わりに

これらは、時代のニーズをうまく捉えた社会的意義の高い制度であり、残された配偶者保護の観点からすれば、大幅に改善されたといえます。
ただし、無制限に保護されるものではなく、一定の要件や制度を利用することでデメリットも生じてきます。
制度の趣旨をよく理解し上手く活用することで、円満で円滑な相続を実現する手助けになることは間違いありません。
もちろん、家族間で良好な関係が築かれており、このような制度を利用することなく、思いやりのある遺産分割ができれば、それに越したことはないでしょう。
相続も身近な関心ごとの一つとして、日頃から家族で気軽に話し合っておくことが大切です。

記事の投稿者

行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
愛媛県松山市南江戸3丁目10-15
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