愛媛県松山市の景観法に基づく景観条例の届出

景観法という法律をご存じでしょうか。
あまり聞きなれない法律で、複雑そうという印象を受けがちですが、法律の中でも比較的シンプルな構成となっています。

景観法施行の背景

日本は戦後の高度成長期による目覚ましい発展を成し遂げ、快適で豊かな社会を築き上げてきました。
その一方で、採算性や合理性を優先したまちづくりにより、個性的なまちなみや緑あふれる自然環境が失われつつあり、大きな社会問題の一つとして認識されるまでになりました。
そこで景観法により、良好な景観が「国民共有の資産」として明確に位置付けられたうえで、各自治体が景観施策を進めるための効果的な各制度が整備されました。

景観法と景観計画

景観法とは、良好な景観作りを促すための法律で、都市の景観を中心に、地域の個性を活かすことのできる柔軟な規制となっています。
都道府県や市町村からなる景観行政団体が景観計画を策定し、景観計画区域内の建物や工作物の建設に対して一定の制限をかけます。
例えば、松山市の観光産業の中核を担う道後地区では、道後温泉本館、宝厳寺、伊佐爾波神社などの文化財も数多く、歴史情緒溢れる景観を楽しむことができます。
さらに道後ハイカラ通りの商店街では、各旅館の足湯の提供なども後押しし、湯上りに浴衣で散策する多くの観光客により独特の景観を形成しています。
それでは、このような場所に大規模なショッピングモールが建設されればどうでしょうか。
確かに利便性は向上するかもしれませんが、せっかくの風情ある景観が台無しであり、地域住民はもとより、道後地区を目当てで訪れた観光客もがっかりすることでしょう。
このような事態を防ぐために、あらかじめ規制を設け、届出によりその基準を満たした建築物のみ、建設をするこができるような制度となっています。

松山市の景観条例

それでは、我がまち松山市の「松山市景観計画」を簡単に解説していきます。
景観法によれば、景観行政団体である松山市は、計画景観地域を指定することができ、「現にある良好な景観の保全が必要な区域」や「自然・歴史・文化等からみて、地域特性にふさわしい良好な景観形成が必要な区域」などが計画景観地域の要件となります。

松山市の景観計画区域設定については、以下の4項目が掲げられており、また具体的エリアも設けられています。
・本市にとって極めて重要であり良好な景観の保全、形成が急務である地域
・すでに地元組織等で独自の取組等がなされ景観まちづくりの素地がある地域
・松山市のランドマークである松山城への眺望を守るべき地域
・良好な景観形成への先進的取組がなされ、市全域に対する先導的役割が期待できる地域

この景観計画区域内で、「建築物や工作物の新築・増築・改築・移転・外観変更」や「良好な景観の形成に支障を及ぼすおそれのある条例で定める行為」などをする場合は、事前に種類、場所、設計、施工方法、着手予定日、その他定められ事項を、建設着手の30日前に届け出る必要があります。
併せて、付近見取図、状況写真、配置図、平面図なども添付する必要があり、景観計画区域や行為の種類によって、要件はそれぞれ細かく設定されているので、届出においては十分注意してください。

景観計画に基づく届出制度 松山市公式ホームページ PCサイト (city.matsuyama.ehime.jp)

景観に関するその他の届出制度

屋外広告物の表示や設置に関しては、市域を「禁止地域」「許可地域」に区分し、各地域および広告物の種類ごとに詳細な許可基準を設けているほか、屋外広告物業の登録や営業に関する規定を設けています。

また、景観に配慮した公共施設の整備に関しては、対象とする公共施設、整備に関する事項を定め、整備に関する事項及び占用許可等の基準を設けることで、良好な景観形成をより一層推進することが期待されています。

松山市景観計画以外にも、景観に関する規制は存在しており、その一つが大規模行為届出制度です。
景観計画区域以外の市内全域が対象となっており、事前に色やデザインなどについて届出し、適合判断の審査を要します。
建築物や工作物の新築・増築・改築・移転・外観変更のうち、高さが 15m超または延べ面積(もしくは築造面積)が 1,000 ㎡ 超など、厳格な基準が設けられており、届出には着工30日前の期日、補完書類の添付など、松山市景観計画とほぼ同様の手続きが求められます。

大規模行為届出制度についてはこちら

終わりに

景観に関する規制では、虚偽の届出やそもそも届出をしなかった場合、着工制限を守らなかった場合は、罰則の措置がありますので、迷うことがあれば、まずは松山市に確認しましょう。
また、補完書類の収集や事務手続きなどが煩わしいと感じたら、書類作成および申請手続きの専門家である、行政書士に依頼することも是非ご検討ください。

記事の投稿者

行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
愛媛県松山市南江戸3丁目10-15
池田ビル103号
TEL:089-994-5782
URL:https://kunimoto-office.net/

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