所有している住まいを活用した老後資金の調達方法
数年前に話題となった老後2,000万円問題の煽りもあり、老後資金に不安を抱いている人は多いようです。
2,000万円問題の真相はさておき、多くの方が老後資金問題に真剣に向き合うきっかけとなったことは、非常に良かったのではないでしょうか。
老後資金の準備
現役を引退したシニアの方が、公的年金のみで快適な老後生活を送るのには少々無理があるようです。
急な病気やけがなどの医療費、入院費、介護費、さらには想定していないトラブルによる修繕費用や、買い直しなどによる出費も必要となるでしょう。
このような不測の事態まで盛り込んだ独自のライフプラン(将来の収支計画)を作成し、元気なうちから老後に備えることが大切です。
しかし、どんなに老後に備えた完璧な計画でも、資金が不足するときは不足するのものです。
そこで、今回は持ち家や所有マンションを上手く活用した資金の調達方法について、「売却」、「リースバック」、「リバースモゲージ」の3つをご紹介いたします。
売却による資金調達
売却とはその名の通り、所有している住まいを売却して現金化することです。
一般的には不動産会社に仲介してもらい、買い手を探すことになります。
売却後は新しい住まいを購入もしくは賃貸することとなり、この住み替えがメリットとデメリットのそれぞれの要素を含みます。
【メリット】
・相場価格での売却が期待できる
・手数料等の費用が最小限に抑えられる
・規模などがライフスタイルに適応できる
【デメリット】
・売却(現金化)までに時間がかかる
・住み慣れた住まいを手放すことになる
・引っ越しの手間がかかる
【注意点】
子供も独立し、老後二入りで暮らすにはあまりにも広すぎる家を手放すことで、維持費や手入れなどの管理の負担を軽減したい方や、病院の側に引っ越して安心して老後生活を送りたい方などには、打ってつけの手段でしょう。
しかし、家族との思い出が詰まった大切な家を手放すのですから、子供など家族ともよく話し合い、他の選択肢も併せて検討することを忘れてはいけません。
リースバックによる資金調達
リースバック(セール&リースバック)とは所有している住まいを不動産会社などに売却して、売却先から賃借し住み続ける契約のことです。
契約がまとまれば、売却代金として一括で資金を得ることができ、その代わりに、契約期間中に家賃を支払っていくことになります。
【メリット】
・住み慣れた住まいを手放さなくてよい
・現金化までに時間がかからない
・将来買戻しすることも検討できる
【デメリット】
・相場に比べて売却価格が低い
・賃貸借期間に制限がある
・ローン残高>売却額の場合は利用不可
【注意点】
リースバック契約では「売却価格」、「支払家賃」、「契約期間」の3項目をそれぞれ取り決める必要があります。
売る側としては、少しでも高く売れるに越したことはありませんが、その分家賃が高くなっては本末転倒です。
もちろん、すぐにでも手持ち資金が必要などの特段の事情があり、それを見越した契約であれば、何の問題ありません。
つまり、3項目のうち何を重視するのかを明確にし、またそのデメリットと全体のバランスをしっかりと見極めることが大切です。
リバースモゲージによる資金調達
リバースモゲージとは所有する住まいを担保に、銀行等から融資を受ける仕組みです。
資金の受取方法は一括払いや、定期払いを選択することができ、所有者が亡くなるか契約期間が終了すれば、銀行等が担保物件を処分するなどして融資分(元金)を回収します。
【メリット】
・月々の支払いは利息のみでよい
・住み慣れた住まいを手放さなくてよい
・借入金の使用用途に比較的制限がない
【デメリット】
・長寿により晩年に元本返済のリスクがある
・金利上昇に伴う追加コストのリスクがある
・相続時にトラブルに発展する可能性がある
【注意点】
リバースモゲージは融資での資金調達となるため、売却やリースバックとは異なり、利息を支払うことで、住み慣れた住まいをそのまま所有することができます。
一方で、長生きをした結果、生きているうちに契約が終了すれば、元本の返済を要求され、晩年に住まいを手放すなどの最悪の事態を招く恐れもあります。
契約の内容には十分に注意して、もしもの備えまで折り込んだ契約にすることが大切です。
終わりに
所有している住まいを活用した老後資金の調達方法について、「売却」、「リースバック」、「リバースモゲージ」を解説してきました。
対象物件の価値や契約者の年齢、さらには相続人の承諾など細かな要件が定められているものもありますので、それぞれの特徴をよく理解し活用してください。
いずれにしても、不動産の価値を事前に調査・把握し、老後のビジョンを明確にしてから契約に臨むことが大切です。
老後資金の調達方法は、何も不動産の活用だけではありませんので、選択肢の一つ程度に考えてください。
不安や悩みがあれば、まずは家族への相談を優先し、解決しない場合や意見を参考にしたい場合などは、専門家に頼ることもおすすめです。
行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
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