事業者の見方、小規模事業者補助金とは(申請編)

前回は、小規模事業者持続化補助金の概要について解説しました。

事業者の見方、小規模事業者補助金とは(概要編)はこちら

今回は、小規模事業者持続化補助金のうち、最も申請数の多い、通常枠(一般型)の申請方法について具体的に見ていきます。

申請に必要書類

小規模事業者持続化補助金(通常枠一般型)の申請に必要な書類は以下のとおりです。

・小規模事業者持続化補助金事業<一般型>に係る申請書(様式1-1
住所、名称、代表者氏名等を記載の上、押印します。

・経営計画書兼補助事業計画書(様式2-1)
応募者の概要、経営計画、補助事業計画を記載します。
詳細は後述しますが、経営計画および補助事業計画は、当該補助金のメインの申請書類に当たり、A4用紙で5枚~8枚程度のボリュームが必要となります。

・補助事業計画書(様式3-1)
本補助金の事業を実施するに当たり、経費の内訳と資金調達方法について記載します。
経費内訳を、より具体的に記載することで、事業に対する実効性の証明につながり、審査員の心証は良くなります。
しかし、採択後の内容変更は難しく、記載する内容は慎重に検討することが大切です。
また、補助金は後払いのため、ここで資金の調達先を明確にし、補助事業を行うだけの資金力があることを証明する必要があります。

・事業支援計画書(様式4)
事業支援計画書以外の必要書類を調え、地域の商工会または商工会議所に提出します。
不備等がなければ事業計画書が発行されます。
2週間程度かかることもあるので、早めに提出することを心がけましょう。

・補助金交付申請書(様式5)
住所、名称、代表者氏名等を記載の上、押印します。
補助金事務局が一時的に預かり、採択決定後に正式に受理されます。

・宣誓・同意書(様式6)
申請内容に虚偽がない旨等の宣言、交付規定規程に従う旨の等同意をします。
法人の代表者または個人事業主の氏名には自署が必要です。

審査基準

経営計画書・補助事業計画書については、以下の項目に基づき加点審査が行われ、総合的な評価が高いものから順に採択されます。
経営状況分析の妥当性
経営方針、目標と今後のプランの適切性
・補助事業計画の有効性
・積算の透明、適切性
審査員が重視する審査基準をよく理解し、経営計画書・補助事業計画書を作成することが大切です。

また、政策的観点から加点審査が行われ、重点政策加点と政策加点からそれぞれ1種類、合計2種類まで選択することができます。
【重点政策加点】
・赤字賃上げ加点
・事業環境変化加点
・東日本大震災加点
【政策加点】
・パワーアップ型加点
・経営力向上計画加点
・事業承継加点
なお、補助金申請システム(名称:J グランツ)を使用せず、郵送で申請を行った事業者に対しては、減点調整が行われますので、できる限り補助金申請システムを利用しましょう。

経営計画と補助事業計画の記載方法

経営計画と補助事業計画は以下の7項目の記載が必須(任意項目は除く)とされています。
最大でA4用紙8枚程度とされていますので、1項目につき1枚を目安に作成すると良いでしょう。

1.企業概要

企業名称、業種などの簡単な概要、主要な商品やサービス、近年の業績などを簡潔にまとめます。
店舗の外観・内観や主要な商品の画像を貼付するなどの工夫も効果的です。
【具体的記載事項の例】
・会社概要
・提供する商品またはサービス
・主な価格帯と客層
・売上高など近年の業績の状況
・業務の状況 等

2.顧客ニーズと市場の動向

業態全体の需要と供給バランス、その中での自社の立ち位置など、現状と課題を外部要因と内部要因に区別して記載するとわかりやすいでしょう。
また、政府機関や民間リサーチ企業の調査結果をもとに、グラフなどを併用し、数値的根拠を客観的に示すこともおすすめします。
【具体的記載事項の例】
・業界の動き
・当社の置かれている状況
・競合他社の状況

3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み

他社と差別化を図れる自社の強みを記載します。
数値化、またはお客様の声などを利用し、より具体化することで信憑性が増します。

4.経営方針・目標と今後のプラン

自社の目指すビジョンを明確にすることで、事業の方向性を示します。
また、目標と今後のプランでは、将来3ヶ年分の売上目標や来客目標に対し、どのような手段で取り組むかなど、ある程度詳細に記載すると良いでしょう。

5.補助事業で行う事業名

30文字以内で分かりやすく端的に記載します。
例えば、「地域における当社の事業活動の認知度向上と新規顧客の獲得」や、「新規顧客の拡充およびテイクアウトメニューの販売強化」などです。

6.販路開拓等(生産性向上)の取組内容

「誰に」「何を」「どのように」に重点を置き記載します。
つまり、ターゲットは誰か、どのような商品・サービスを、どのような手段により提供するのかを具体的に記載します。
本申請書の一番の山場です。
これまで記載した顧客ニーズと市場の動向や自社が提供する商品・サービスの強みなどを上手く織り交ぜ、なぜその取り組みが必要なのかを熱く、端的に記載します。
ここでも文章だけで表現するのではなく、具体的数値や表・グラフを用いてアピールしましょう。

例えば、補助事業の実施にあたり、宣伝広告用の新聞折込を予定しているのであれば、エリア、折込部数を具体的に記載し、チラシデザインまで貼付すると審査員の心証は良くなります。
これらの作業は遅かれ早かれ、いずれしなくてはなりません。
前倒しで行いそれらを申請書に盛り込むだけで、計画の実現性を証明することにつながり、申請書がぐっと厚みを増します

7.補助事業の効果

販路開拓等の取組や業務効率化の取組を通じて、どのように生産性向上につながるのかを説明する必要がります。
ここでも先ほどと同様に、「誰に」、「何を」、「どのように」した結果、自社にどのような効果を与えるのかを記載します。
また、経営方針・目標と今後のプランと照らし合わせて記載することで、上手くまとめ上げることができます。

終わりに

小規模事業者補助金の採択率は60%~70%(回により異なる)程度と比較的高く、ここまで記載してきた内容をしっかりと盛り込んだ申請書であれば、採択されることも十分可能でしょう。
申請にあたり補助金の要綱をよく読み、制度の趣旨や目的を把握することはもちろんですが、事務手続きの煩雑さや、事業計画の作成に不安を感じたら、専門家に依頼することも検討してください。
次回は、小規模事業者持続化補助金(事業実施編)について解説します。

事業者の見方、小規模事業者補助金とは(事業実施編)はこちら

記事の投稿者

行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
愛媛県松山市南江戸3丁目10-15
池田ビル103号
TEL:089-994-5782
URL:https://kunimoto-office.net/

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です