決算書の種類と本来の役割とは

決算書には、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュ・フロー計算書(C/F)の財務三表といわれるものがあります。
その他にも、株主資本等変動計算書や注記表などもあり、企業の経営成績財務状況を把握する上では、これらの決算書を有効に活用する必要があります。
今回は、決算書の種類やその役割などについて解説していきます。

決算とは

「決算」とは、企業が一定の期間(通常は1年間)ごとに財務状況や業績を集計し、その結果を決算書としてまとめる作業やプロセスを指します。
決算は、企業の経済的な健全性や業績を把握し、利害関係者に対して財務情報を提供するための重要な活動です。
決算の過程では、企業は以下の主要なステップを実施します。

1. 会計期間の終了

企業は特定の期間(通常は1年間)を選び、その期間内での財務情報を集計します。
この期間は会計年度と呼ばれます。

2. 会計処理

企業は日々の取引や経済活動を記録し、会計処理を行います。
これには、収入や費用の記録、資産や負債の評価、会計帳簿の管理などが含まれます。

3.決算書の作成

企業は決算書を作成します。
主な決算書には、貸借対照表(バランスシート)、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書があります。
これらの諸表は、企業の資産、負債、純資産、収益、費用、利益、キャッシュフローなどを示します。

4. 監査と承認

一部の企業は、決算書の監査を行います。
独立した監査人が企業の決算書を審査し、その正確性や適正性を確認します。
また、企業の役員や株主が決算書を承認する手続きも行われます。

5. 公開と開示

決算書は、株主や投資家、規制当局などの利害関係者に対して公開・開示されます。
これにより、企業の財務状況や業績に関する情報が透明化され、利害関係者が適切な判断や意思決定を行うことができます。

決算書の種類

決算書には、貸借対照表や損益計算書などがあり、金融証券取引法に従い作成する決算書を財務諸表といい、会社法に従い作成する決算書を計算書類といいます。
なお、金融証券取引法は株式を公開している上場企業に適用される法律のため、日本の多くの企業は、キャッシュ・フロー計算書の作成は義務付けられていないことになります。

貸借対照表(B/S)

貸借対照表は、企業の特定の時点での財務状況を示し、企業の資産、負債、純資産の状況を要約して表示します。
会計の基本原則である「貸借の対応関係の原則」に基づいて構成されており、資産の合計額は、負債と純資産の合計額と等しくなります。

損益計算書(P/L)

損益計算書は、企業の特定の期間内での収益と費、そしてその差である利益や損失を示します。
損益計算書は、企業の営業活動や業績を評価するための重要な情報源となり、企業は営業活動の収益性や経費の管理、業績の評価、将来の戦略の立案などを行うことができます。

キャッシュ・フロー計算書(C/F)

キャッシュ・フロー計算書は、企業の特定の期間内でのキャッシュフロー(現金の入出金)の動向を示します。
企業が現金の受け入れと支出を通じて、どのように資金を運用しているかを明確にし、企業の資金管理やキャッシュ・フローの予測、投資家や銀行などの利害関係者にとって重要な情報となります。

株主資本等変動計算書

株主資本等変動計算書は、企業の特定の期間内での株主資本の変動を示します。
企業が新株の発行、株主への配当、株主からの資本の調達、利益の再投資などによって株主資本がどのように変化したかを明確にします。

決算書の注記表

決算書の注記表は、企業の決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、株主資本等変動計算書)に関連する詳細な情報や説明を提供します。
注記表は、決算書の数字や数値以外の重要な事項について補足情報を提供し、決算書の解釈や理解を助ける役割を果たします。

決算書の役割

決算書は、企業の財務情報をまとめた報告書であり、企業の財務状況や業績を評価するための重要な役割を果たします。

財務分析

決算書をもとに、企業の財務分析が行われます。
貸借対照表や損益計算書の数値や比率を分析し、企業の資金状況収益性効率性などを評価します。
これにより、企業の強みや課題を把握し、経営戦略や資金調達の計画を策定することができます。

利害関係者への報告

決算書は、企業の株主総会や取締役会などの場で利害関係者に報告されます。
決算報告書や役員報酬報告書なども作成され、適切な情報開示が行われます。
これにより、株主や投資家は企業の業績や財務状況を把握し、投資判断を行うことができます。

税務申告と法的な要件の遵守

決算書は税務申告のための基礎となります。
企業は所得税や法人税などの税務申告を行い、税金を適切に納める必要があります。
また、会社法や金融規制などの法的な要件に準拠し、決算書の作成と公開を行うことが求められます。

投資家や金融機関との関係強化

決算書は投資家や金融機関との関係強化にも寄与します。
財務情報の正確性や透明性が高まることで、投資家や金融機関は企業に対する信頼性を高め資金調達や信用取引の条件において、良好な関係を築くことができます。

終わりに

決算は企業の財務情報を集計し、公正かつ透明な形で利害関係者に提供する重要なプロセスです。
決算書を通じて企業は自身の財務状況を把握し、経営戦略の立案や意思決定利害関係者との信頼関係の構築に役立てることができます。
いずれの企業においても、決算書の作成は義務付けられているわけですから、せっかく手元にある決算書、有効に活用してはいかがでしょうか。

記事の投稿者

行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
愛媛県松山市南江戸3丁目10-15
池田ビル103号
TEL:089-994-5782
URL:https://kunimoto-office.net/

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です