月次決算は本当に必要なのか

企業が月次決算を導入している目的は、「年次決算の標準化」や「月次業績を早くし知りたいから」など様々です。
月次決算の最大の役割としては、過去の業績評価にとどまるのではなく、将来の年間目標の達成を実現するための仕組みであることです。
つまり、月次予算と月次決算は経営ビジョン実現するための、一番身近な道しるべといえます。
今回は、月次決算の特徴やその必要性について解説していきます。

月次決算とは

事業による経営成績や財務状況を明確にするために、企業は年に一度の決算が義務づけられており、これを年次決算といいます。
一方、月次決算とは、1か月ごとに行われる決算のことで、事業年度末に行う年次決算とは別に、月次決算を行うかどうかは企業の任意です。
毎月会計を締めた時点で、年次決算とほぼ同じ会計処理を行いまが、中小企業のうち、月次決算を導入している企業は5割に満たないといわれています。

月次決算のメリット

月次決算は企業の透明性向上や経営の効率化に貢献し、持続的な成長や利益確保に寄与する重要なツールとなっています。

迅速な情報提供

月次決算は定期的に行われるため、企業の財務状況や業績の最新情報を迅速に把握することができます。
経営者や関係者は短期間での結果を確認し、必要な対策や調整を行うことができます。

問題の早期発見

月次決算によって収益や費用、資産や負債の変動が把握できるため、問題や課題が発生している場合に早期に気付くことができます。
問題の早期発見は、適切な対策を講じるために重要です。

経営判断の根拠

月次決算は経営者や投資家にとって、経営判断の根拠となる情報を提供します。
収益や利益、キャッシュフローなどの指標を分析することで、企業の業績や財務状況を客観的に評価し、将来の戦略や方針を策定する上で役立ちます。

内部統制の強化

月次決算は企業の内部統制を強化する手段となります。
定期的な財務情報の収集や処理、監査の実施などが行われることで、財務データの信頼性や精度を向上させることができます。

利害関係者への情報提供

月次決算は企業の利害関係者に対して、財務状況や業績の透明性を提供します。
投資家や銀行、株主などが企業の健全性や成長性を評価するために必要な情報を提供することができます。

月次決算のデメリット

デメリットを考慮しながら、企業は月次決算の利点と制約をバランスさせながら適切な経営判断を行う必要があります。

時間とコストの要件

月次決算を行うには、財務データの収集処理監査などに時間とコストがかかります。
特に大規模な企業や複雑な業態を持つ企業では、財務データの集計や報告作業に多くのリソースが必要となります。

非効率な情報利用

月次決算では、1か月のデータを基にした情報が提供されますが、経営上の意思決定や戦略策定にはもう少し長期的な視点が必要となる場合もあります。
月次決算だけに依存すると、短期的な変動や一時的な要因に左右される可能性があります。

情報の不足

月次決算は財務データに基づいているため、経営の他の側面や非財務的な要素については詳細な情報を提供しづらい場合があります。
戦略的な意思決定や継続的な改善には、財務データだけでなく、市場動向や顧客の意見などの情報も必要となります。

情報の過度な公開

月次決算は一定の情報を企業の内外に公開するため、競合他社や取引相手などが財務情報にアクセスできる可能性があります。
競争上のデメリットや機密情報の漏洩などのリスクが存在するため、情報の公開には慎重な対応が求められます。

月次決算のデメリットを補完する方法

月次決算のデメリットを補完するために、以下のような手段により対策を講じることができます。

キャッシュフローのモニタリング

月次決算では利益や財務状況が把握されますが、キャッシュフローの状況を定期的にモニタリングすることも重要です。
キャッシュフローの問題は、企業の運営に大きな影響を与える可能性があります。

経営ダッシュボードの導入

経営ダッシュボードは、主要な経営指標や業績指標をリアルタイムで可視化するツールです。
月次決算だけではなく、経営者や関係者による迅速な情報アクセスと意思決定を支援する役割を果たします。

経営会議や報告体制の改善

月次決算の報告だけでなく、定期的な経営会議や報告体制を確立することも重要です。
経営者や関係者との対話や議論を通じて、より包括的な情報共有や問題解決が行われます。

リアルタイムのデータ収集と分析

財務データだけでなく、市場データや顧客データなどのリアルタイムな情報を収集し、分析することも重要です。
これにより、迅速な市場変化や顧客ニーズの把握、競合他社の動向の把握などが可能になります。

予算策定と逐次予測

月次決算の結果を基に、予算策定や逐次予測を行うことも効果的です。
これにより、将来の業績や財務状況の予測が可能になり、長期的な経営戦略の策定やリソース配分の最適化が行えます。

これらの手段を活用することで、月次決算のデメリットを補完し、より綿密な経営情報を得ることができます。
経営者は、自社の状況に合わせて適切な情報収集と分析の方法を選択し、継続的な経営改善を図ることが重要です。

終わりに

月次決算では、正確な会計処理が求められることはいうまでもありませんが、スピードも非常に重要です。
例えば、締め後10日も20日もかかるような月次決算では遅すぎて、とても経営判断の最適な材料にはなりえません。
遅くとも、締め後5営業日で完了するような、工夫や仕組み作りが必要となってきます。
月次決算を取り入れて、有効な経営管理につなげてはいかがでしょうか。

記事の投稿者

行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
愛媛県松山市南江戸3丁目10-15
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