意外と知らない?経営革新計画(申請編)

前回は、経営革新の役割を中心に解説しました。

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今回は、中小企業庁が推奨している、経営革新計画の意味と申請方法について解説します。

経営革新計画とは

経営革新計画とは、中小企業が「新事業活動」に取り組み「経営の相当程度の向上」を図ることを目的に策定する中期的な経営計画書です。
経営革新計画を策定することで、現状の課題や目標が明確になるなどの効果が期待できます。
また、国や都道府県に計画が承認されると様々な支援策の対象となります。

新事業活動とは

「新事業活動」とは、新しい事業を立ち上げることだけでなく、既存事業の改善や拡大新たな市場開拓なども含まれます。
個々の中小企業にとって新たな事業活動であれば、既に他社で取り組まれている技術や方法であっても、承認の対象となります。
ただし、業種ごと、地域ごとの導入状況を考慮し、既に相当程度普及している技術や方法においては対象外となりますので注意が必要です。
具体的には、以下のようなケースです。

新商品の開発又は生産

業務用の大型で強力な空気清浄機を製造していた企業が、きれいな空気に対するニーズの高まりを受けて、小型化に挑戦し、一般家庭用の小型で強力な空気清浄機の開発などが該当します。

新役務の開発又は提供

老舗の旅館が、空室を日帰り客向けのリラクゼーションルームとして改装し、新しいサービス事業を行うことで、昼間の時間帯の増収を図るとともに、そこから新規宿泊客の拡大などが該当します。

商品の新たな生産又は販売の方式の導入

果物の小売業者が、本格的なフルーツパーラーを開店し、果物についての知識などの強みを活かすとともに、高品質フルーツを使ったスイーツや、フルーツや野菜のフレッシュジュース、健康を意識した野菜を取り入れたランチメニューの提供などが該当します。

役務の新たな提供の方式の導入

不動産管理会社が、企業の空き家となった社員寮を一括借り上げして、それを高齢者向けに改装し、介護サービス、給食サービスを付加して、高級賃貸高齢者住宅への賃貸などが該当します。

技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動

介護用ロボットの利便性向上を図るための研究開発と実証実験を行い、その成果を元に介護ロボットを開発し、自社の事業への活用などが該当します。

経営の相当程度の向上とは

「経営の相当程度の向上」とは、売上高や利益率の向上生産性の向上技術力の向上などを指します。
具体的には、以下の2つの指標が事業期間の3年~5年で、相当程度向上することを指します。

「付加価値額」又は「一人当たりの付加価値額」の伸び率

付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
一人当たりの付加価値額=付加価値額÷従業員数

事業期間が3年の場合・・・9%以上
事業期間が4年の場合・・・12%以上
事業期間が5年の場合・・・15%以上
※ 年率3%以上の伸び率

付加価値額とは、企業活動の全体を把握し、本来の企業価値を判断するため、営業利益(金:企業価値)に、人件費(人:雇用)と減価償却費(物:投資)を加算します。

「給与支給総額」の伸び率

給与支給総額=役員報酬+給料+賃金+賞与+各種手当

事業期間が3年の場合・・・4.5%以上
事業期間が4年の場合・・・6%以上
事業期間が5年の場合・・・7.5%以上
※ 年率1.5%以上の伸び率

申請の流れ

1.都道府県担当部局等へ問い合わせ

対象者の要件、経営革新計画の内容、申請手続き、申請窓口、支援措置の内容等を相談することができます。
なお、任意グループ等複数の中小企業者が共同で計画を作成する場合は、申請代表者・実施主体者の構成によっては、都道府県ではなく国の地方機関等が窓口になることもあります。

2.必要書類の作成・準備

計画承認申請書は、都道府県担当部局、国の地方機関等で用意されています。
申請書への記載は申請様式に従い記載します。
都道府県担当部局及び県内の中小企業支援センター、商工会、商工会議所等では申請書の書き方、ビジネスプランの策定の仕方等でアドバイス受けることができます。

3.各都道府県担当部局、国の地方機関等への申請書の提出

申請書提出先は、申請代表者・実施主体者の構成で決まります。
本法に関連する債務保証、融資等を利用する場合は、計画申請と並行して当該関係機関と密接な連絡を取る必要があります。
都道府県担当部局と支援策の実施機関は連携をとっているため、希望の支援策の実施機関に相談すると良いでしょう。

4.都道府県知事、国の地方機関等の長の承認

都道府県等による審査を経て、経営革新計画の承認がされ、支援策の実施機関の審査後に支援措置などが行われます。
計画開始後、フォローアップのために、計画進捗状況調査などが行われます。
承認は支援措置などを保証するものではなく、支援策を活用できる対象になったに過ぎません。
各支援策にはそれぞれ実施機関の審査が設けられています。

申請の対象者

経営革新計画に申請ができるのは、以下の特定事業者等です。

特定事業者として経営革新計画の対象となる会社及び個人の基準

製造業等 ・・・500人以下
卸売業・・・ 400人以下
サービス業 ・・・300人以下
小売業・・・ 300人以下

特定事業者として経営革新計画の対象となる組合及び連合会

事業協同組合
事業協同小組合
生活衛生同業組合
生活衛生同業小組合 等

終わりに

経営革新計画は、申請する事業者自身の経営改善に資する計画であり、この計画策定によって政府や公的機関が行っている各種支援を得られるため、結果的に自社の経営改善が進められます。
具体的には、保証・融資の優遇、海外展開に伴う資金調達の支援、ファンド等の支援、販路開拓の支援などがあり、経営革新計画を立てておくことで、融資面で優遇されたり、補助金を受け取れたりすることもあります。
次回は、これらの優遇措置について詳しく解説していきます。

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記事の投稿者

行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
愛媛県松山市南江戸3丁目10-15
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