意外と知らない?経営革新計画(優遇措置編)
前回は、計画革新計画の申請方法などについて解説しました。
今回は、経営革新計画の承認を受けることで、どのようなメリットがあるか、具体的に解説していきます。
経営革新計画の優遇措置
経営革新計画の承認を受けることで、以下のような様々な支援を受けることができます。
・保証・融資の優遇措置
・海外展開に伴う資金調達の支援措置
・投資による支援
・販路開拓の支援措置
保証・融資の優遇措置
中小企業者に対する融資の制度は多数ありますが、経営革新計画の承認を受けると、主に次の4つの保証・融資の優遇措置があります。
信用保証の特例
「信用保証」とは、中小企業者が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が債務保証をする制度です。
経営革新計画の承認を受けた特定事業者に対して、「普通保証等の別枠設定」と「新事業開拓保証の限度額引き上げ」を行うものです。
【普通保証】
保証限度額・・・2億円⇒4億円
無担保保証・・・8,000万円⇒1億6,000万円
【新事業開拓保証】
保証限度額・・・2億円⇒3億円
日本政策金融公庫の特別利率による融資制度
日本政策金融公庫では、中小企業者に対して事業に必要な資金を長期・固定で融資しています。
経営革新計画に基づく事業を行うために必要な設備資金及び運転資金については金利が優遇されており、特別利率が適用されます。
【中小企業事業】
貸付限度額・・・7億2,000万円
貸付利率・・・基準金利▲0.65%~▲0.9%
【国民生活事業】
貸付限度額・・・7,200万円
貸付利率・・・基準金利▲0.65%
高度化融資制度
高度化事業とは、中小企業者が共同で工場団地を建設したり、商店街にアーケードを設置する事業などに対し、都道府県と独立行政法人中小企業基盤整備機構の診断・助言を受けた上で、長期・低利で融資が受けられるものです。
貸付割合・・・貸付対象施設の整備資金の80%以内
貸付利率・・・0.35%又は無利子
食品等流通合理化促進機構による債務保証
食品製造業者等は、経営革新計画の実行にあたり、金融機関から融資を受ける際に、食品等流通合理化促進機構による債務保証を受けられます。
保証限度額・・・4億円
保証料率・・・食品等流通合理化促進機構所定の料率
海外展開に伴う資金調達の支援措置
中小企業者が承認経営革新計画に従い、海外において経営革新のための事業を行う場合、以下の資金調達支援を受けることができます。
スタンドバイ・クレジット制度
中小企業者の外国関係法人等が、現地(海外)の金融機関から期間1年以上の長期資金を借入する際に、日本政策金融公庫が信用状を発行しその債務を保証する制度です。
本制度により、外国関係法人等による海外での現地通貨の円滑な調達を支援します。
保証限度額・・・4億5,000万円
保証料率・・・日本公庫所定の料率
クロスボーダーローン制度
中小企業者の外国関係法人等に対し国内親会社を経由せず、日本政策金融公庫が直接貸付けを行う制度です。
本制度により、外国関係法人等の円滑な資金調達を支援します。
融資限度額・・・直接貸付 別枠14億4,000万円
融資利率・・・基準利率
中小企業信用保険法の特例
中小企業者が国内の金融機関から海外直接投資事業に要する資金の融資を受ける際、承認を受けた経営革新計画に従って海外において事業を行う中小企業者及び組合等については、海外投資関係保証の限度額を引き上げています。
保証限度額・・・2億円⇒3億円
日本貿易保険(NEXI)による支援措置
中小企業者の外国関係法人等が、現地(海外)の金融機関から借り入れを行う際に、地銀等の保証に加え、株式会社日本貿易保険(NEXI) が、海外事業資金貸付保険を付保する制度です。
本制度により、外国関係法人等による海外での現地通貨の円滑な調達を支援します。
保険引受限度額・・・上限の定めは特になし
保険料率・・・日本貿易保険所定の保険料率
投資による支援
起業支援ファンドからの投資
ベンチャー企業等への投資の円滑化を目的として民間のベンチャーキャピタル等が運営するベンチャーファンド(投資事業有限責任組合)へ中小企業基盤整備機構が出資を行い、当該ファンドがベンチャー企業等へ投資を行うことにより、資金調達支援及び経営支援を行います。
起業支援ファンドは、主に創業又は成長初期の段階にあるベンチャー企業等へ投資を行うファンドです。
中小企業投資育成株式会社からの投資
原則、資本金の額が3億円以下の株式会社が、中小企業投資育成株式会社からの投資を受けることによって、自己資本の充実とその健全な成長発展を図ることができます。
販路開拓の支援措置
販路開拓コーディネート事業
商品・サービスを持つ企業のマーケティング企画から、首都圏・近畿圏を舞台に想定市場の企業へのテストマーケティング活動までを支援します。商社・メーカー等出身で広範囲な販路ネットワークを持つ専門家が市場へのアプローチ等を支援します。
新価値創造展
新価値創造展は、中小企業・ベンチャー企業が自ら開発した優れた製品・技術・サービスを展示・紹介することにより、販路開拓、業務提携といった企業間の取引を実現するビジネスマッチングの機会を提供するイベント(展示会)です。
終わりに
ここまで解説してきた通り、経営革新計画を策定することで、現状の課題や目標が明確になるなどの効果が期待できるほか、国や都道府県に計画が承認されると様々な支援策の対象となり、企業にとってのメリットは大きいといえるでしょう。
さらに多くの補助金で審査時の加点項目となっており、補助金の採択率を向上させることにもつながります。
ただし、経営革新計画の策定と承認には、一定程度の知識やそれなりの時間を要するため、専門家を交え計画的に実行することをおすすめします。
行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
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