事業者の見方、小規模事業者補助金とは(事業実施編)
前回は、小規模事業者持続化補助金の申請方法について解説しました。
補助金が採択されると、申請時に記載した補助事業計画に基づき事業を実施していくことになります。
今回は、事業を実施するうえでの注意点や、事業終了後の事務手続きなど、以下の項目に沿って解説していきます。
≪採択後の流れ≫
1.採択通知
2.交付決定通知
3.補助事業の実施
4.実績報告
5.補助金額の確定通知と請求
6.補助金の交付後の手続き等
1.採択通知
申請した補助金が無事審査を通過し採択されると、ウェブサイトでの採択結果一覧の公表および採択通知書が個別に送付されます。
採択通知は、補助対象経費や補助金交付希望額を承認するものではありません。
場合によっては採択後に一部申請書の修正を求められることもあります。
2.交付決定通知
採択後、申請書に不備がなく、または不備を修正し承認されると、交付決定通知書が送付されます。
交付決定通知書に記載された交付決定日以降であれば、補助事業を開始することができます。
交付決定日より前に補助事業を開始した経費(発注、支払い、契約締結など)については、補助の対象外となりますので十分に注意が必要です。
3.補助事業の実施
申請書に記載した補助事業について、予め要綱で定められた期限内で実施していきます。
経費の支払いは原則銀行振り込みであり、事業実施期限を過ぎた経費(納品、支払い、業務)や、定められた方法以外での支払いなどは補助の対象外となります。
特に以下の事項に注意しましょう。
(1)経費の支出について
経費の支出については厳格なルールが定められており、以下のような支払方法または購入方法は補助の対象外となります。
≪補助の対象外となるケース≫
・1取引10万円(税抜)超の現金による支払い
・クーポン、ポイント、商品券等による支払い
・分割払いで実施期限内に完済していないもの
・単価が50万円(税抜)以上の中古品の購入
・個人からまたはオークションによる購入 等
(2)必要な書類について
補助事業終了後、事業報告時に以下の書類を提出する必要があり、提出しない場合は、補助金の交付を受けることができません。
≪提出書類≫
・見積書
・発注書または契約書
・完了報告書または納品書
・請求書
・支払証明書
(領収書、振込受領書、通帳のコピー等)
・成果物
(購入商品や作成内容が分かる写真等)
経費区分によって提出書類が異なりますので、事前に手引きを確認しておきましょう。
事業報告時に慌てて収集することの無いよう、事前に必要書類を把握して、日頃よりこまめに整理しておくことが大切です。
(3)計画の変更について
補助事業は、交付決定を受けた内容で実施するのが原則ですが、やむを得ず補助事業計画を変更する場合は、変更承認申請する必要があります。
事前に承認を得ず事業計画を変更した場合は、補助金の交付を受けることができません。
≪変更承認が必要なケース≫
・事業計画に対して内容変更が軽微でない
・経費間で大幅な流用が見込まれる
・経費区分を修正する
・完了予定日を延長する
なお、変更承認申請をすれば、必ず承認される訳ではなく、仮に承認されたとしても、審査期間は補助事業に着手することができず、大幅に時間をロスすることになります。
補助金申請の段階からしっかりと綿密な計画を立て、万全を期して補助事業に臨みましょう。
4.実績報告
予め要綱で定められた提出期限と、補助事業が完了したその日から起算して30日が経過した日のいずれか早い日までに、実績報告書を提出します。
提出する書類は以下のとおりです。
≪共通の提出必須書類≫
・実績報告書(様式8)
・経費支出管理表、支出内訳書
・経費支出の必要な全ての証拠書類
特別枠で採択されている場合や特定の取引の場合などは、その他必要な提出書類があります。
5.補助金額の確定通知と請求
実績報告書に不備がなく事務局で受理されれば、「確定通知書」が送付されますので、「清算払請求書(様式9)」に必要事項を記載と押印をし、事務局に送付します。
6.補助金の交付後
補助事業の終了日の翌月から1年間の補助事業による効果を「事業効果および賃金引上げ等状況報告書(様式14)」により報告しなければなりません。
また、補助事業における帳簿および証拠書類は、補助事業完了年度の終了後5年間は、保存しておく必要があります。
補助金交付後も一定程度の事務負担や、取得財産の管理についての制約など、基準が設けられているので注意してください。
終わりに
小規模事業者持続化補助金について「概要編」、「申請編」、「事業実施編」の3回に渡り解説してきました。
販路開拓、生産性向上に向けた取り組みでの金銭的サポート面において、非常に有効な補助金である一方、比較的事務手続きが軽減されているとはいえ、一定の負担が強いられるのもまた事実です。
補助金の財源は国の負担、つまり我々国民の税金により賄われているため、細かな基準の順守や事業報告の義務は当然といえるでしょう。
補助金を申請する場合は要綱を、採択さた後は実施手引きをよく理解し、良識ある行動で補助事業に取組みましょう。
行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
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