会社設立時の現物出資とは
会社設立において一番のネックとなるのは、やはり資金の調達でしょう。
資金の調達方法には自己資金、投資家による出資、金融機関からの借入、補助金や助成金などさまざまで、何れを選択するかは非常に重要な問題です。
どうしても資金が不足している場合や、手もとの現物が設立後の会社に有益である場合など、金銭以外の出資、つまり現物で出資することは可能なのでしょうか。
今回は、会社設立時の現物出資について解説していきます。
現物出資とは
出資は金銭以外の財産ですることもでき、これを現物出資といいます。
現物出資の目的物は、不動産、自動車・機械・その他の動産、有価証券、債券、特許権などの知的財産権などが該当します。
現物出資は、出資者にとって現金を用意する必要が無いため、金銭的負担を軽減することができる一方で、その目的物が過大評価され、不当に多くの株式が付与されると、会社の財産的基盤の安定性を損ない、他の株主や会社債権者を害するおそれがあります。
そこで、会社法はこれを防ぐために、現物出資を相対的記載事項とし、その効力が生ずるためには、原始定款に記載する必要がありまます。
なお、会社設立時には、発起人のみが現物出資をすることができ、募集設立における募集株式の引受人はできません。
定款への記載事項
定款に現物出資がある旨を記載する場合は、以下の事項を記載します。
1.金銭以外の財産を出資する者の氏名または名称
2.当該財産およびその価額
3.出資者に対して割り当てる設立時発行株式の数
現物出資の定款の記載は、対象財産を特定する必要があります。
例えば、不動産の場合は、登記事項証明書の記載することで、機械類の場合は、種類、型式、製造者、製造年、製造番号等を記載することで、それぞれ特定する必要があります。
検査役の調査
現物出資を記載した定款は、公証人の認証を受けた後、その記載内容について、原則として発起人の申立てに基づく裁判所選任に係る検査役の調査を受けます。
当該検査役の報告に基づいて、裁判所が不当と認めた場合は、これを変更する決定がなされます。
そして、発起人は、この決定の確定後1週間以内に限り、その全員の同意により、定款の変更をすることができます。
なお、募集設立の場合は、検査役の報告等が創立総会に提出され、創立総会が不当としたときは、その決議で定款を変更することができます。
検査役の調査が免除される場合
以下の場合は、検査役の調査が免除されます。
1.現物出資および財産引受けの各目的物につき定款に記載された価額の総額が500万円を超えていない
2.現物出資の目的物のうち、市場価格の有価証券について定款に記載された価格が、その市場価格として会社法施行規則6条により算定される額を超えていない
3.現物出資の目的物について定款に記載された価額につき、弁護士、公認会計士、税理士等からその価額が相当であると証明を受けている
つまり、現物出資および財産引受けの各目的物の定款記載価額の総額が500万円以下のときは、検査役の調査が不要となります。
中小企業においての現物出資では、多くのケースでこれに該当することになります。
設立時取締役等の調査
検査役の調査が免除された場合でも、設立時取締役は、定款に記載された現物出資等の価格が相当であること、弁護士等の証明が相当であること、出資の履行が完了していることなどについて調査を行う必要があります。
現物出資の場合には、「設立時取締役等作成の調査報告書」と「現物出資者である発起人の会社宛ての財産引継書」が必要となります。
なお、現物出資等の財産の会社成立時における実際の価値が、定款記載価額に著しく不足する場合は、発起人および設立時取締役には、原則として連帯してその不足額を会社に支払う義務が課せられます。
終わりに
現物出資は会社設立時の資本形成の一手段として利用されますが、各々の事業状況や戦略に合わせて検討する必要があります。
専門家との相談や事業計画の評価を通じて、最適な資金調達方法を選択することが重要です。
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