「建設業財務諸表」とは?作成の流れや注意点を解説

財務諸表とは、企業や組織の経営成績や財政状態を数字でまとめた公式な報告書のことです。
会社が「どれくらい儲けているか」「どんな資産や借金があるか」を客観的に示すものです。
ここでは建設業法上の財務諸表について解説していきます。

建設業財務諸表とは、建設業法に基づいて作成される特定の財務書類のことを指します。
この財務諸表は、建設業者が経営状況や事業活動を明確に示すために必要なもので、主に貸借対照表や損益計算書、完成工事原価報告書などで構成されています。

申請用の書類であるため、税務申告用や会社法上の財務諸表とは異なり、法律で定められた形式や内容を順守しなければなりません。

一般的な財務諸表との違い

建設業財務諸表は、一般の財務諸表と比較していくつかの重要な違いがあります。

まず、建設業に特有の項目が含まれる点です。
特に「完成工事原価報告書」や「兼業事業売上原価報告書」など、建設業の事業特性に合わせた追加の書類が求められます。

また、税務申告用の財務諸表では消費税が含まれるケースが多いのに対して、建設業財務諸表は消費税を税抜きで処理するなど、計算ルールも異なります。

建設業法に基づく財務諸表の必要性

建設業法では、建設業を営む法人や個人事業主が、経営状況を適切に開示することを義務付けています。
このため、建設業財務諸表の作成は、新規の建設業許可申請や毎年の決算変更届を提出する際に必須となります。

これにより、行政は経営の健全性を評価し、安全で確実な工事のための適切な業者選定を行う基準を確保できます。
例えば、経営状況分析を通じて、業者の経営能力が判断される仕組みになっています。

法人・個人事業主での違い

建設業財務諸表の作成内容は、法人と個人事業主で異なります。

法人の場合、貸借対照表や損益計算書に加え、株主資本等変動計算書や注記表の作成が求められます。
一方で、個人事業主の場合は貸借対照表と損益計算書だけの提出で済むケースが一般的です。

ただし、いずれの場合も建設業法で定められた様式を遵守しなければならないため、作成時には注意が必要です。
特に、法人では資本金規模や負債総額に応じて追加書類が必要になるケースがある点も見逃せません。

建設業財務諸表を構成する主な書類

貸借対照表とは

貸借対照表は、事業の財政状況を示す書類で、資産、負債、純資産の3つの要素で構成されます。
例えば、事業に関連する建設機械、現金、預金といった資産がどのように調達され、何に使われているかを可視化します。

建設業財務諸表では、特に建設業特有の資産と負債を明確に区分する必要があります。
作成時には、建設業法規則に基づいた勘定科目を使用し、金額単位を千円単位に統一することが求められる点が注意点となります。

損益計算書の特徴

損益計算書は、ある一定期間内の収益と費用を明らかにし、事業の収益性を示す書類です。
建設業財務諸表における損益計算書は、完成工事高や工事金収入といった建設業特有の項目が含まれる点が特徴です。

また、兼業事業による収益は明確に区分して記載する必要があります。
作成する際は、建設業の工事収益や費用を確実に計上するほか、消費税の処理を適切に行うことが重要なポイントです。

完成工事原価報告書の役割

完成工事原価報告書は、その事業年度内に完成した工事にかかった原価を明らかにするための書類です。
この書類は、材料費・労務費(外注費を含む)・経費など、工事原価に関連する内訳を詳細に記録します。

完成工事原価の合計は損益計算書の売上原価として転記されるため、その正確性が求められます。
特に、外注費や人件費に関する記載ミスは適正な報告に支障をきたすため注意が必要です。

兼業事業売上原価報告書について

兼業事業売上原価報告書は、建設業以外の事業活動による収益とそれに関連する原価を記載する書類です。
建設業のみを対象とする他の書類とは異なり、この報告書は兼業事業を行う事業者にのみ必要となります。

例えば、不動産賃貸業や他業種の小規模プロジェクトを運営している場合、その収益と費用を建設業の内容と区別して記載する必要があります。
作成にあたっては、収益や原価を正確に分類し、建設業財務諸表全体の整合性を担保することが大切です。

建設業財務諸表の作成の流れと注意点

作成に必要なデータの収集

建設業財務諸表を作成する際には、まず必要なデータを正確に収集することが重要です。
主なデータとしては、完成工事高や工事原価、兼業事業の売上高などが挙げられます。

また、領収書や契約書、請求書をはじめとした証憑類や、勘定科目ごとの仕訳帳、試算表などの帳簿類も必要です。
これらの情報をあらかじめ整理することで、作成作業をスムーズに進められます。

さらに、建設業許可申請や決算変更届では詳細なデータが必要となるため、書類の正確性が求められる点には十分注意してください。

勘定科目の振り分けと計上方法

建設業財務諸表では、法律で定められた勘定科目に適切に振り分けて計上することが必須です。

特に建設業では、「完成工事原価」や「兼業事業」など、業種特有の科目があるため、それぞれの数値を正確に区別する必要があります。
同じ事業でも建設業に該当するものとその他事業が混在している場合は、適切に分離し、建設業法に基づいた形式で記載を行います。

また、完成工事原価報告書との整合性も重要で、例えば労務費や外注費といった原価項目が損益計算書と矛盾しないよう注意する必要があります。

消費税の扱いに注意するポイント

建設業財務諸表の作成時には、消費税の扱いにも注意が必要です。

建設業法に基づく財務諸表では、消費税を税抜きで処理することが基本となっています。
ただし、免税事業者の場合は税抜き処理が不要となるため、自身の事業形態に応じた正確な処理を行う必要があります。

また、税務申告用の数値と建設業法上の財務諸表の数値が異なる場合があるため、注意が必要です。
特に税務書類との整合性については、後々のトラブルを避けるためにも十分に確認を行いましょう。

金額単位の統一と端数処理ルール

建設業財務諸表では、金額単位についても統一した形式で記載する必要があります。
通常、財務諸表は千円単位で記載し、千円未満の端数は切り捨てが原則です。
例えば、987円の場合は「0千円」、1,023円の場合は「1千円」と記載します。

記載ルールが正確でない場合、行政側から書類の修正を求められることがあるため注意してください。
資産や負債の計上においても特有のルールが適用されるため、これらを遵守して正確な財務諸表を作成することが求められます。

建設業財務諸表の理解を深めよう

経営状況分析(経審)の基礎知識

経営状況分析、通称「経審」は建設業許可を維持するために欠かせない手続きの一つです。
正式には経営事項審査と言い、公共工事を請け負う企業が、経営の健全性や事業の適格性を第三者機関に評価される制度です。
その際、建設業財務諸表の内容が重要な役割を果たします。

経審の目的は、企業の経営規模、経営能力、そして実績を数値化し、他社と比較可能な形で評価することです。
そのため、貸借対照表や損益計算書だけでなく、完成工事原価報告書などの建設業財務諸表特有の書類も審査対象となります。
作成方法や注意点をしっかり理解し、正確にデータを記載することが求められます。

建設業法による様式の改正点

建設業法に基づく財務諸表の様式は時折改正が行われます。

最近の改正点としては、勘定科目の取扱いや記載フォーマットの変更、または消費税の表記方法に関するルールが挙げられます。
特に、税務申告用の財務諸表と異なり、建設業財務諸表では未成工事支出金や完成工事高など建設業特有の項目が強調されるため、それらを反映した形式になっています。

これらの改正点を見逃すと、財務諸表の不備や行政側からの指摘につながる可能性があります。
常に最新の法律やガイドラインに注意を払い、様式に沿った正確な作成方法を実践することが重要です。

行政への提出時の注意点

建設業財務諸表を作成した後、行政へ提出する際にはいくつかの注意点があります。

まず、決算報告書は事業年度終了後4ヵ月以内に提出する義務があります。
提出期限を過ぎると、行政手続きが遅れる可能性がありますので、早めの準備を心がけましょう。

また、必ず建設業法が定めた書類形式に従う必要があり、提出前に記入ミスや記載漏れがないかを確認してください。
例えば、消費税の記載方法や千円単位での切り捨て処理などにも注意が必要です。これらは、書類の不備を防ぐために欠かせないポイントといえます。

終わりに

建設業財務諸表の作成は手間や時間がかかるため、業務効率化のためのツールを活用することが推奨されます。
建設業専用の会計ソフトや、財務諸表作成に特化したツールを導入することで、作業のミスを減らし、効率良く書類を作成できます。

特に、貸借対照表や完成工事原価報告書などでは細かい計算や勘定科目の振り分けが求められるため、これらのツールが強力なサポートとなります。
こうしたソフトの多くには法律改正に対応した更新機能がついているため、最新様式での提出にも安心です。

記事の投稿者

行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
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