自動車に抵当権を設定?申請方法から注意点まで徹底解説!

資金繰りや事業拡大のための資金調達を検討する際、「自社(または個人)で所有している自動車を担保にして融資を受けたい」と考える経営者や個人の方は少なくありません。

実は、土地や建物といった不動産と同じように、自動車にも「抵当権」を設定して金融機関などから融資を引き出すことが法律で認められています。

しかし、自動車の抵当権設定は、通常の自動車の売買(名義変更)とは異なる専門的な法律知識が求められ、対象となる車両の制限や税金など、押さえておくべき注意点が多数存在します。

本記事では、自動車手続きや法務の専門家である行政書士の視点から、自動車の抵当権設定の特徴、実務上の注意点、そして具体的な申請手続きの方法まで、網羅的に詳しく解説します。

自動車の抵当権設定とは?

自動車の抵当権設定とは、「自動車抵当法」という法律に基づき、自動車を借入金の担保として提供し、その旨を公的な記録(自動車登録ファイル)に登録する制度です。

特徴①:不動産と同じように登記(登録)できる財産

自動車抵当法は、自動車を単なる「モノ(動産)」ではなく、「不動産のように登録できる価値ある財産」として扱います。

車検証の交付を受けている登録自動車であれば、運輸支局で抵当権設定の登録を行うことで、債権者(お金を貸す側)は万が一返済が滞った際に、その自動車を競売にかけて優先的に資金を回収する権利(優先弁済権)を得ることができます。

特徴②:車を「使用したまま」融資を受けられる

これが最大のメリットです。

質屋のように担保となる物品を相手に預ける必要はありません。
抵当権を設定しても車の占有は移転しないため、債務者(お金を借りる側)は今まで通りその自動車を業務やプライベートで乗り続けながら、融資を受けることが可能です。


トラックや営業車など、事業に不可欠な車両を担保にする場合に非常に有効な手段となります。

特徴③:「所有権留保」との違い

実務上混同されやすいのが、カーローンを組んで車を購入した際に設定される「所有権留保」です。

所有権留保

ローン会社やディーラーが車の「所有者」となり、購入者はローンを完済するまで「使用者」となる仕組みです。

抵当権設定

所有権はあくまで「自分(お金を借りる側)」にあり、その自己所有の車に対して債権者が「抵当権」という担保権をくっつける仕組みです。

自動車抵当権を設定する際の注意点

抵当権の設定はどんな車でも、無料でできるわけではありません。
申請前に必ず確認すべき重要な注意点が5つあります。

対象は「普通自動車(登録自動車)」のみ。軽自動車は不可!

これが最も陥りやすい落とし穴です。

自動車抵当法が適用されるのは、運輸支局に登録されている「普通自動車(大型車等含む)」に限られます。
軽自動車や、二輪車、小型特殊自動車には抵当権を設定することができません。
軽自動車は国土交通省への「登録」ではなく、軽自動車検査協会への「届出」という扱いになるためです。

もし軽自動車を担保に融資を行いたい場合は、抵当権ではなく、動産譲渡登記や契約に基づく「譲渡担保」といった別の法的スキームを利用する必要があります。

登録免許税(法定費用)がかかる

抵当権の設定登録を行うには、国に納める「登録免許税」が必要です。
金額は「債権金額(借入額)または極度額の1000分の3(0.3%)」と定められています(100円未満は切り捨て)。

【計算例】1,000万円の融資に対する抵当権を設定する場合:1,000万円 × 3/1000 = 30,000円の登録免許税がかかります。

不動産登記と同様に、融資額が大きくなればなるほど設定費用も高額になる点に注意が必要です。
なお、ローン完済後に抵当権を「抹消」する際にも、車1台につき1,000円の登録免許税がかかります。

車検証の「所有者」名義を確認する

抵当権を設定できるのは、車の「所有者(設定者)」のみです。

車検証を見たときに、「使用者」欄には自分の名前があっても、「所有者」欄がローン会社やリース会社になっている場合は、勝手に抵当権を設定することはできません。
事前にローンを完済し、所有権解除(名義変更)を行って自分名義にする必要があります。

複数の抵当権(順位)の設定も可能

不動産と同じように、1台の自動車に対して複数の抵当権を設定し、「第1順位」「第2順位」といった形で順位をつけることが可能です。

ただし、車の価値は不動産と比べて下落スピードが早いため、第2順位以降の抵当権で十分に債権を保全できるかは、担保価値の厳密な査定が求められます。

車検切れの車には設定できない

抵当権設定登録の前提として、その自動車が有効に登録されている(現在車検があり、ナンバーがついている状態)必要があります。

一時抹消登録中(ナンバーを返納している状態)の車には抵当権を設定できません。

自動車抵当権設定登録の申請手続き

ここからは、実際に抵当権を設定する際の手続きの流れと必要書類を解説します。

申請する窓口

自動車の使用の本拠の位置(通常は所有者の住所または会社の所在地)を管轄する運輸支局(陸運局)または自動車検査登録事務所の登録窓口で申請を行います。

必要書類一覧

抵当権の設定には、権利の発生を証明する書類など、厳格な公的書類が求められます。

  • 申請書(OCRシート等の専用用紙)
  • 手数料納付書
  • 自動車抵当権設定契約書
    債権者と設定者(所有者)の間で交わした契約書の原本。
    債権額、利息、損害金、対象車両の車台番号などが正確に記載されている必要があります。
  • 印鑑登録証明書
    債務者、設定者(所有者)、債権者の全員分が必要です。
  • 自動車検査証(車検証)の原本またはコピー
    電子車検証の場合は「自動車検査証記録事項」も合わせて準備します。
  • 委任状
    代理人や行政書士に手続きを依頼する場合、債権者および設定者の実印が押印されたものが必要です。

手続きの流れ

契約の締結
お金の貸し借りに関する「金銭消費貸借契約」と、車を担保にする「自動車抵当権設定契約」を締結し、実印を押印します。
必要書類の収集
役所で印鑑証明書等を取得します。
申請書の作成
運輸支局の規定に従い、OCRシート等に正確に情報を記入します。
運輸支局での申請・登録
管轄の運輸支局窓口に書類一式を提出し、登録免許税を印紙で納付します。
登録事項等証明書の取得
手続き完了後、抵当権が正しく設定されたことを確認するため、運輸支局で「登録事項等証明書(現在記録)」を取得し、債権者に提出するのが一般的な実務の流れです。

行政書士に依頼するメリット

自動車抵当権設定は、個人や企業の担当者自身で行うことも不可能ではありませんが、行政書士に依頼することをお勧めするのには明確な理由があります。

複雑な書類作成と法務チェックを丸投げできる

抵当権設定契約書には、民法や自動車抵当法に適合した厳密な記載が求められます。
条項に不備があれば、いざという時に担保権を実行できないリスクがあります。
行政書士は、法的要件を満たした契約書の作成から、運輸支局特有の専門的なOCRシートの作成まで、ミスのない書類作成を代行します。

迅速な手続きで「融資までのタイムラグ」を防ぐ

ビジネスにおける資金調達はスピードが命です。
書類の不備で運輸支局を何度も往復することになれば、融資の実行日が遅れてしまい、資金繰りに悪影響を及ぼします。

自動車業務に精通した行政書士であれば、最短スケジュールで正確に登録を完了させることができます。

軽自動車など「対象外」の場合の代替スキーム提案

前述の通り、対象車両が「軽自動車」や「建設機械(一部)」であった場合、運輸支局では抵当権を設定できません。

そのような場合でも、法務の専門家である行政書士であれば、「動産譲渡担保契約書の作成」や、法務局での「動産譲渡登記」のご案内など、事業者のニーズに合わせた別の担保スキームを提案・サポートすることが可能です。

よくある質問(Q&A)

実務上、経営者や個人の方からよく寄せられる疑問について、Q&A形式でわかりやすく解説します。

抵当権が設定されている車を、途中で売却したり廃車にすることはできますか?

原則として、債権者の同意なしに売却や廃車はできません。
抵当権が設定されている状態では、運輸支局での名義変更(移転登録)や廃車(抹消登録)の手続きに制限がかかります。

車を売却・処分したい場合は、事前に借入金を一括返済するなどして債権者の同意を得て、抵当権の「抹消登録」を先に行う必要があります。

自動車税の支払いや車検の手続きはどうなりますか?

これまで通り、所有者(お金を借りた側)が行います。
抵当権を設定しても、車の所有権自体が移るわけではありません。

したがって、毎年の自動車税(種別割)の納付義務や、車検(継続検査)の手続き、自賠責保険・任意保険の加入および支払いなどは、引き続き設定者(所有者)自身が行うことになります。

万が一、借入金の返済ができなくなった(滞納した)場合はどうなりますか?

債権者によって車が差し押さえられ、競売にかけられる可能性があります。
返済が滞り債務不履行となった場合、債権者は法律に基づき抵当権を実行します。

裁判所の手続きを経て自動車は競売(または任意売却)にかけられ、その売却代金が優先的に未払い金の返済に充てられます。
当然、車は手放さなければならなくなります。

不動産の抵当権設定は「司法書士」と聞きましたが、車の場合は誰に依頼すればいいですか?

自動車の手続きは「行政書士」の専門分野です。

不動産や法人の登記(法務局での手続き)の専門家は司法書士ですが、自動車の登録(運輸支局での手続き)を業として代行できるのは行政書士のみです。
管轄する役所が異なるため、自動車の抵当権に関する手続きは、自動車法務に精通した行政書士へご依頼ください。

現在ローン支払い中の車(車検証の所有者がディーラー名義)に抵当権を設定できますか?

できません。
まずはローンを完済し、自分名義に変更する必要があります。
抵当権を設定できるのは、車検証上の「所有者」のみです。

ローン返済中でディーラーや信販会社に「所有権留保」されている車は、あなた自身の所有物ではないため担保にできません。
この場合、まずは現在のローンを完済し、ご自身(または自社)名義に「所有権解除(名義変更)」を行ってから抵当権設定の申請を行う流れになります。

終わりに

自動車の抵当権設定は、車を事業等で使用しながら資金調達ができる非常に優れた制度です。
その反面、対象が「普通自動車」に限られること、債権額に応じた「登録免許税」がかかること、そして厳格な契約書と公的書類が求められることなど、特有のハードルが存在します。

金融機関からの指定がある場合や、企業間での融資の担保として自動車を活用する際は、手続きの確実性とスピードを担保するためにも、自動車登録手続きの専門家である「行政書士」に相談・依頼することを強く推奨します。

専門家の知見を活用し、安全かつスムーズな資金調達を実現しましょう。

記事の投稿者

行政書士くにもと事務所
特定行政書士 國本 司
松山市南江戸3-10-15 池田ビル103号
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